最新記事

中国外交

孔子学院で進める中国共産党の対米「洗脳」大作戦

CHINA AID HAS STRINGS ATTACHED

2018年7月27日(金)18時00分
ベサニー・アレン・イブラヒミアン(フォーリン・ポリシー誌記者)

予算の厳しい大学が狙われる

ただし、簡単にはいかない場合も少なくない。資金力があり、中国関連のプログラムが確立している大学は、孔子学院に対して強い立場を取れる。孔子学院が提供する数十万ドル相当のプログラムを当てにする必要がないからだ。一方で知名度が低く、予算や資源が乏しい大学は、漢弁の資金提供がなければ、学生や地元住民が中国語を学ぶ機会さえなくなるかもしれない。

サバナ州立大学も、資金が潤沢なアジア研究の学部を持っていない。私が宿泊したホテルのフロントで働く青年は、今夏にダンスの巡業で中国を訪れるという。孔子学院の後援がなければ、ダンサーたちは生涯、中国を自分の目で見ることはないかもしれない。

アメリカの大学の孔子学院は、アメリカ人と中国人が共同代表を務める。「アメリカ人の代表は学問の自由を支持し、孔子学院を建設的にマネジメントしようとする」と、ピーターソンは言う。しかし「現実にはかなり難しい。ほぼ不可能な場合もある」。

政治家も警戒を強めている。今年3月、米上下両院に外国影響力透明化法案が提出された。成立すれば孔子学院は外国政府の出先機関として登録を義務付けられ、司法省に資金の提供先や活動内容を報告しなければならない。外国から5万ドル以上の寄付を受けた大学も開示が義務付けられる。

予算が逼迫した大学が最初に削るのは、語学教育だ。米国現代言語協会によると、全米の大学で中国語を履修した学生の数は、13年の約6万1000人から16年には5万3000強と13.1%減っている。

大学が学生に最大限の機会を与えたいと思うのは、当然のことだ。教育機関の予算が乏しく、中国政府がその穴を喜んで埋めようとする限り、孔子学院は全米の大学で影響を振るい続けるだろう。

<本誌2018年7月17日号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

[2018年7月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替は様々な要因を背景に市場において決まるもの=高

ワールド

スペイン、内燃エンジン車販売禁止計画の堅持要請 欧

ビジネス

米コカ・コーラ、英コスタ・コーヒー売却計画が破談の

ワールド

韓国警察、旧統一教会本部などを捜索 議員らへの金品
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中