最新記事

中国経済

「一帯一路」で押し寄せる中国貨物 欧州鉄道網がパンクの危機に

2018年7月3日(火)16時30分

野心的目標

一方の中国では、習近平国家主席の看板政策である一帯一路を他よりも積極的に推し進めようと各市当局がしのぎを削っており、今後も欧州に流れるコンテナの洪水は増え続ける見込みだ。

国営メディアや政府発表によると、中国南西部重慶からは、昨年663本の貨物列車が欧州に向けて発車しており、1000本を目標にしている。兵馬俑で有名な西安も、1000本を目指している。

世界最大級の日用品取引の中心地である東部の浙江省義烏市は、2017年は168本だった運行本数を、今年は350本にする予定だと、鉄道運行会社、義烏時代工業投資のサイモン・ジャン氏は言う。

業界幹部によると、この鉄道輸送網は、貨物量がまだ持続可能な規模に達していないため、現段階では採算が取れておらず、船で輸送するよりコストがかかるという。

だが、船便よりも最大で20日早く着き、航空便よりも安い列車輸送には、自動車や電子機器を売る企業からの需要が集まっている。

「中欧班列のおかげで、輸送コストを削減することができたと思う」と、台湾の電子機器メーカー和碩聯合科技(ペガトロン)の、蘇州を拠点とする輸送ロジスティクス責任者Hu Jie氏は言う。同社は、2015年から鉄道輸送を利用し始めた。

現段階では、中国政府の補助金が鉄道の運行を支えている。

上海の東華大学が昨年公表した研究によると、中国の地方自治体は2011─2016年の間に、欧州と中国を結ぶ途中切り離しのない列車に合計約3億ドル(約330億円)の補助金をつぎ込んだ。

義烏時代工業投資のジャン氏によると、輸送会社は利益を上げるためにはコンテナ1つあたり1万ドルの輸送料金を受け取る必要があるが、補助金のおかげで、料金は1コンテナあたり約3000─6000ドルで済んでいるという。中には、船便とほぼ変わらない1コンテナ1000ドルで請け負う会社もあるといい、「とてもカオスだ」と、ジャン氏は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州委、軍事輸送の新システム提案へ 国境越えた機動

ワールド

独中副首相が会談、通商関係強化で一致 貿易摩擦解消

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中