最新記事

英語学習

「会話を重視」しすぎた英語教育の末路 今こそ「読み・書き」を再発見せよ!

生後、人間の言葉は伝達の手段として獲得され発達しますが、やがて思考の手段にもなっていきます。5、6歳になると子どもが考えていることをひとり言のように発話する「自己中心的言語」といったものが見られます。T君の砂場でのひとり言の正体はこの自己中心的言語だったのです。T君の母語は日本語ですから、彼の思考は日本語で確立されます。彼は日本語で考え、考えをめぐらせてまとめていくというわけです。

しかしながら、英語保育などで仲間との共同の生活や遊びが英語で行われると、なかなか日本語の自己中心的言語が育たず、思考の確立が難しくなります。前述の2歳の女の子は、母親から英語で話しかけられ、母語の発達が遅れてしまい、自分の思考をまとめられないといえるでしょう。

英語漬けにすると思考が育たない

今、英語教育をうたった幼児教育をよく見かけます。英語保育園、英語のベビーシッター、英語のプリスクール、英語学童保育といった宣伝や看板も珍しくありません。どれくらい英語漬けになるのかは定かではありませんし、家庭でも英語環境にいる場合(親が英語を話すなど)は別ですが、本来、保護者や先生、仲間と一緒に生活したり遊んだりしながら母語を確立する時期に、英語漬けになって母語が十分に定着しないと、思考する力が育ちません。

英語が話せる「早道」だと思って通わせた英語保育によって、日本語が定着しないで思考ができず、さらには心も落ち着かない。学校に通い始めても日本語の語彙が足らず、理解できないので学力がつかず、かえって英語の習得が遅れる、といった現象が起きることになりかねません。

文科省は、近頃の小学校では、子どもたちが教科書を理解できないと指摘しています。文章で表された内容を理解して、自分の考えにしていくことができないというのです。これには小学校入学前の子どもの言語活動に課題があります。

就学前の語彙の量と質の違いは、学力の差に大きく影響することになり、母語が理解できないと教科書を理解できない、先生の言うことが理解できないといった状況を生むことになります。入学前の言語活動が十分でない理由には、家庭での会話が少なかったり、絵本の読み聞かせなどが少なかったりといったことが挙げられています。

ですから、日本のように、生活圏に日本語が満ちているような環境においては、幼いときに日本語を豊かに身につけることはとても重要です。そのためには、周囲の大人や兄弟の言葉を真似ることから始まり、伝達手段として習得し、思考の手段として言葉を育んでいくといった母語獲得の自然なプロセスが不可欠です。そうして母語を身に付けることで思考ができ、英語などの外国語に出会った際にも、母語と英語を相対化して身に付けることができるのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米関税「根拠ない」、欧州企業は対米投資中止を=仏大

ワールド

カナダ首相、米に対する限定的な対抗措置発表 トラン

ワールド

米関税措置の「免除困難」、引き下げ巡り各国と協議継

ビジネス

政策調整急がず、現状の金利は適切な水準=FRB副議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中