アジア駐在の欧米特派員はセクハラ男だらけ
観光客のみならず、男は母国を離れると性的なご乱行に走りやすい。最悪の被害はジャーナリズムや外交団、多国籍企業など、影響力のある特権的地位にいる男たちがもたらしている。
ニューヨークでなら解雇されかねない行動でも、北京やクアラルンプールの駐在員事務所では本社に報告されず、そもそも被害を報告する仕組みがない場合もある。事件が報告されても、加害者の特派員がアジアの別な地域に移されるだけで終わる例も多い。
「国外、特に中国や東南アジアに派遣された多くの男性が、女性に対して困った見方をしていると思う」と、中国南部に駐在する男性写真家は言う。「セックスが非常に容易にできて、しかも地元の女性が白人男性を特別視するような場所では、それにつけ込む男たちがいるものだ」
国際メディアの駐在事務所は、翻訳や調査の作業を行い、面倒な取材手続きを処理するための「現地スタッフ」を採用する。だが支払う給料は、特派員の収入の数分の1だ。この不平等な力学によって問題は悪化する。
中国では、こうした「ニュースアシスタント」は主として若い女性が担う。このパターンは、仕事に必要な英語力を備えた人材が女性に偏りがちな他のアジア諸国でも似たようなものだ。
「地元で仕事をするノウハウがある人材に、然るべき待遇が与えられていない。法律や労働組合の支援はもちろん、当たり前のサポートや教育的支援もない」と、香港生まれのジャーナリスト、ディディ・カーステンタトローは言う。遠く離れた本社は、現地スタッフの存在さえ知らないかもしれない。
「現地スタッフに雇用の保障はない。問題が起きれば、次の日にはクビになるかもしれない」と言ったのは、かつてニュースアシスタントを務めていたある女性。その結果、セクハラだけでなくジェンダーや人種による差別が起きても見逃されるケースもある。
スタッフが懸念を訴えても、地理的な距離や文化的な障壁に阻まれて調査が困難であることも多い。上司の悪事を告発することは、自国内でも困難だが、国外では不可能に近い。
昔はアジア駐在の特派員は、自分の語学力では手に負えない個人的な用事までニュースアシスタントにやらせていた。さすがに、こんな習慣は特派員の世代が変わり、経歴も多彩になった今では、ほとんど消えている。それでも立場の弱い現地スタッフは今なお多くのリスクを個人で引き受け、報道現場で大切な役割を果たしながら、本社からは2級社員と見られている。