月の裏側を探査する中国のしたたかな戦略と、戦略なき日本の探査
中国の月探査機「嫦娥三号」Stringe-REUTERS
中国は2018年5月17日、月の裏側に向けて、通信衛星「鵲橋」(しゃくはし、かささぎばし)を打ち上げた。
鵲橋は、今年末に打ち上げが予定されている、月の裏側に着陸する探査機「嫦娥四号」と、地球との通信の中継を担う。
中国は2000年代から、着実かつ堅実に、戦略的な月探査を進めている。一方で日本の月探査計画は、長期的な展望に欠け、迷走しつつある。
中国の月探査計画「嫦娥」
中国が進める月探査計画「嫦娥」は1991年から始まり、2007年に初の月探査機「嫦娥一号」を打ち上げ、月のまわりを回りながらの探査に成功。2010年には後継機「嫦娥二号」の探査にも成功している。
2013年には「嫦娥三号」を打ち上げ、月面着陸にも成功。着陸機から無人の探査車を送り出し、月面を走行しての探査も行った。中国はソ連と米国に続く、世界で3番目に月着陸に成功した国となった。
今年末に打ち上げが予定されている「嫦娥四号」は、この嫦娥三号の改良型で、同じく着陸機と探査車からなる。大きく異なるのは着陸場所で、月の表側に着陸した三号とは違い、四号は月の裏側への着陸を目指す。古今東西、月の裏側に着陸した探査機はなく、成功すれば世界初の快挙となる。
月の裏側は表側に比べ、起伏が大きく、また地殻も厚いなど、いくつもの違いがあることがわかっている。その様子を直接地面に触れて探査することで、さらなる違いや、その違いがどうして生まれたのか、そして月の起源の謎についても迫れると期待されている。
ちなみに、月は自転と公転が同期しており、常にある面を地球に向けている。つまりその裏側は決して地球側を向くことはなく、地球から見ることもできない。つまり、そこに降りた探査機は、地球と直接通信することができない。
そこで、今回打ち上げられた鵲橋が、地球と嫦娥四号との通信を中継する役割を担う。
中国の月探査機「嫦娥三号」に搭載された探査車「玉兎号」