最新記事

米朝関係

在韓米軍が核戦争を想定した初の大規模退避訓練──連れて行ってもらえるのは誰?

2018年3月23日(金)15時43分
トム・オコナー

核戦争を想定し、訓練に参加するボランティアは初めてアメリカ本土まで退避する Yasuo Osakabe/U.S. Air Force

<4月1日から始まる米韓合同軍事演習で、朝鮮有事を想定しアメリカ市民を退避させる大規模な訓練が実施される>

ピョンチャン(平昌)五輪の開催で延期されていた米韓合同軍事演習は、4月1日から実施されることが決まった。米軍はこの演習に合わせて、アメリカ市民の韓国からの退避を想定した大規模な訓練を行う。軍事演習によって、一時収まっていた米朝間の緊張が再び高まることも予想される。

米軍機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」によると、今回の演習は、核武装した北朝鮮との間に戦争が勃発し、アメリカ市民20万人以上を避難させるという想定。ボランティアの参加者100人を実際にアメリカ本土まで移送する訓練は初めてになる。

この訓練は「フォーカスト・パッセージ」と呼ばれ、米韓両軍が4月1日から開始する野外機動訓練「フォール・イーグル」、指揮系統訓練「キー・リゾルブ」に続いて、4月16~20日の期間で実施される。

連れて行ってもらえるのは誰?

ピョンチャン五輪開催以降、米朝間の緊張は一時収まっていたが、今回の軍事訓練は、朝鮮半島が今も戦争の影に覆われていることをあらためて示した。米太平洋軍のクリストファー・ガーバー大佐は2月、朝鮮半島情勢は新たにより緊張した局面に入り、民間人を安全に帰国させる新たな手段が必要だ、と語っていた。

「機密事項の詳細は明かせないが、有事の際の危険の範囲、規模は拡大しているし、軍事作戦自体も刻々と進化している。非戦闘員の退避計画はそれに適応させる必要がある」と、ガーバーはハワイの地元紙の取材に答えている。

米海軍によると、非戦闘員の退避作戦の対象になるのはアメリカ国籍の「米政府機関の職員とその家族、非戦闘員として避難を指定された米軍軍人、そして軍人の家族」。

またアメリカ以外の国籍の市民で、「当該国(韓国)に居住する米政府機関職員のうち避難する意志がある者、民間米国人の家族、米軍軍人と軍関係者の家族、さらに上記に指定された者の家族」も対象となる。

退避訓練と同時に実施される軍事演習は、ピョンチャン五輪の開催やその後の南北会談の実施を考慮して、北朝鮮を挑発しないよう延期されていた。

ドナルド・トランプ米大統領が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と史上初の米朝首脳会談を5月末までに行うと合意した後も、3月に本誌の取材に応じた政府高官は、軍事演習は予定通り実施すると語っていた。

今週3月19日に国防総省が発表した声明によると、ジェームズ・マティス国防長官と韓国側は「昨年と同様の規模で」演習を実施すると合意した。北朝鮮側にも軍事演習の実施は通知されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナ大統領と会談 トマホーク供与

ワールド

トランプ氏、中国主席との会談実施を確認 対中100

ワールド

トランプ政権、民主党州で新たにインフレ支出凍結 1

ビジネス

米セントルイス連銀総裁、雇用にリスクなら今月の追加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 9
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 10
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中