最新記事

アフリカ

【写真特集】南アフリカに今も残る街の分断

2018年2月2日(金)18時30分
Photographs by JOHNNY MILLER

道路で隔てられた一方の区画は、庭の木々が自家用プールに影を落とす美しい住宅街。だがもう一方は、布やブリキ、車のタイヤなどを材料にした小屋が無数に立ち並ぶ貧困地区となっている。南アフリカ最大の都市ヨハネスブルク郊外の同地区では、劣悪な生活環境を改善する試みがたびたび行われてきた。しかし、国外からの労働者の大量流入などによる人口増加に対応できていないのが現状だ

<アパルトヘイト撤廃から20年以上がたった今も、南アフリカは経済格差によってはっきりと分断されている>

物事の理解には「大所高所」からの視点が必要だ。通常、比喩的に使われるこの表現だが、実際に高い所から広い範囲を見渡すことで本質が見えやすくなることもある。

写真家ジョニー・ミラーはドローン(無人機)を飛ばして、上空から町の写真や動画を撮影。文字どおり高所から見下ろすことで、隣り合う地区で生活レベルが大きく異なるなど、経済格差が存在する現実を目に見える形で映し出した。

撮影場所は、地球上で最も格差が大きい場所の1つである南アフリカだ。この国で50年近く続いたアパルトヘイト(人種隔離政策)では、法律によって人種ごとに居住区が定められ、白人と非白人の住む場所は道路や河川、空き地の「緩衝地帯」などで区切られていた。

アパルトヘイトが撤廃されたのは1994年。しかし20年以上がたった今も南アフリカには、広い庭付きの邸宅が並ぶ区画と、狭い小屋がひしめく荒れた区画が数メートルの距離で隣接する場所が何カ所もある。

境界線と経済格差が土地と住民を分断し続けている――それが空から見下ろしたときに見えるこの国の現実だ。


ppsafrica02.jpg

世界的に知られる南アフリカ産ワインを生み出すステレンボス地区のブドウ畑のそばには、農園で働く人々のために1950年代に造られたタウンシップ(旧非白人居住区)がある。南アのワイン産業の中心地であるため国外からも多くの観光客が訪れるが、このタウンシップに関心が向けられることはまれだ


ppsafrica03.jpg

ケープタウンの東方40キロのところにあるタウンシップ(写真右側)は、アパルトヘイトの時代に独身の男性労働者向けに造られた。裕福な人々が暮らす地区(同左側)との間には緩衝地帯があり、侵入を防ぐフェンスも存在する。現在は緩衝地帯にも住宅があるが、そこにはかつて高速道路の建設で立ち退きを余儀なくされた人々が住んでいる


ppsafrica04.jpg

手入れされたゴルフコースのフェアウエーの隣に貧困層の居住区がある。東部ダーバンにあるこのコースには、アパルトヘイト時代に非白人選手として初めて国内大会で優勝したシューサンカー"パプワ"シューゴーラムの名前が付けられている。非白人はクラブハウスに入ることが法律で禁じられていたため、彼は優勝したときも降り出した雨に打たれながら表彰を受け、その姿は世界に大きな衝撃を与えた

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

11月鉱工業生産速報は前月比 -2.6%=経産省(

ビジネス

完全失業率11月は2.6%、有効求人倍率は1.18

ワールド

シリア、来年から新紙幣交換開始 物価高助長との懸念

ワールド

米、ナイジェリア北西部でイスラム過激派空爆 トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中