最新記事

米中関係

あのランディがトランプ政権アジア担当要職に──対中戦略が変わる

2018年1月25日(木)12時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

そのときランディは、「歴史を捏造しているのは中国共産党である。嘘と思うなら天安門広場にある博物館に行ってみるといい。歴代の中国共産党指導者の中から、胡耀邦の肖像だけが省いてある」と、冒頭の挨拶で述べた。

この胡耀邦は1972年のスピーチで、「もし中国人民が我が党の真相を知ったならば、人民は必ず立ち上がり、我が政府を転覆させるだろう」と語ったことで有名だ。

ランディは拙著『毛沢東――日本軍と共謀した男』出版に関するVOA(Voice of America)やRFA(Radio Free Asia)の報道を見て、彼が唱えてきた「中共こそが歴史を捏造している」という事実を立証する何よりの証左として、筆者を温かく迎え入れてくれた。

トランプ政権の対中政策が変わる

たしかに影の大統領とまで言われたバノン前主席戦略官は、"Fire and Fury"(『炎と怒り』)でホワイトハウスの内部情報を暴露したことによってトランプ大統領の激しい怒りを買い、大統領への影響力は薄まりはしただろう。しかし世界に対する情報発信力はまだ持っているはずだ。2017年12月21日付のコラム「バノン氏との出会い――中国民主化運動の流れで」に書いたように、バノン氏もまた、「日中戦争時代に毛沢東が日本軍と共謀していた事実」に注目し、筆者を取材した。

そして今、トランプ大統領が「やはりこの人に頼るしかない」と任命したランディもまた、毛沢東に関する真相、すなわち中国共産党が歴史を捏造している事実に注目しているのである。

この事実がトランプ大統領の耳に入るのは、時間の問題だろう。

日本政府は、まさに日中戦争への贖罪意識や諸々の配慮があってか、真実を中国に突き付ける勇気は持ち合わせていない。自民党や公明党の中には、むしろ中国に対して迎合的な議員さえいる。そういった議員への配慮からか、「毛沢東――日本軍と共謀した男」は、まるで禁句のような扱いになっている様相を呈しているくらいだ。

しかし、あのトランプ大統領がランディを政権内に入れた以上、トランプ政権の対中政策は必ず変わっていく。

これまで背後でキッシンジャーがシナリオを描いてきた「習近平-トランプ」の蜜月から抜け出し、やがて「中国共産党が強大化したのは、日中戦争時代に国家と中国人民を裏切って、日本軍と共謀していたからだ。中国には、日本に歴史カードを突き付ける資格はない」とツイートする日が来るかもしれない。アメリカを凌駕するであろう国が現れるなんて、トランプには許せないことだろうから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中