Xmasのジャカルタは厳戒態勢 知事のせいで反キリスト教の火に油
クリスマス~年末年始の行事が多いジャカルタの独立記念塔広場を警戒する武装警官 Beawihart-REUTERS
<宗教間の扱いを公平にしようと思った多数派イスラム教徒の知事がクリスマス行事に介入しようとしたことからボタンの掛け違いが>
インドネシアの首都ジャカルタはクリスマス、年末年始を迎えるにあたり、首都圏警察が警察官、爆発物処理班など約1万人を動員して厳戒態勢に入る。特にキリスト教の教会や関連施設の周辺は常時警察官が張り付くほか、巡回警備も実施する方針で、爆弾テロ、火炎瓶攻撃や聖職者襲撃などの不測の事態を警戒する。
これは12月18日、首都圏警察の報道官が明らかにしたもので12月23日から2018年の1月2日までの間を「特別警戒警備期間」として最高度の警戒態勢に入るとしている。
世界最大のイスラム教徒人口(約2億5000万人の人口の89%)を擁するインドネシアだが、国民の約10%はキリスト教徒である。
そのキリスト教徒にとって重要なクリスマスイブ、クリスマスなどの宗教行事は例年、急進的なイスラム教徒による抗議、反対運動、さらに中東のイスラムテロ組織「イスラム国(IS)」信奉者やインドネシア国内のイスラムテロ組織メンバーなどによる襲撃やテロの対象となることがあった。
このため、例年警戒が強化されるのが通例で、今年は約1万人の警察官による厳戒態勢となった。
独立記念広場使用を拒否
今年の厳戒態勢の背景には、イスラム教徒を中心とする支持者の票を得て10月にジャカルタ特別州知事に就任したアニス・バスウェダン知事のある方針が影響している。
アニス知事はジャカルタの中心部、大統領官邸の南に位置する独立記念塔(モナス)広場をこれまで禁止されていた「宗教関連行事での使用」を許可した。これにより、イスラム教団体などが堂々と同広場で宗教関連行事、集会を開催できるようになった。米トランプ政権によるイスラエルの首都認定問題に抗議するイスラム教組織の大規模集会も、12月17日にこの広場で行われた。
アニス知事側はイスラム教団体ばかりに同広場の使用を許可していてはキリスト教やヒンズー教、仏教など他の宗教との公平性を欠く可能性があるとしてキリスト教団体にクリスマスの関連行事を同広場で開催するよう求めていた。
ところが申し出を受けたインドネシアのキリスト教団体をまとめるインドネシア教会連合(PGI)がこれに反対、事実上の拒否声明を出したことから関係がこじれてしまった。
アニス知事の支持母体は中心がイスラム教団体で、このキリスト教組織の「申し出拒否」方針が伝わるとイスラム教団体の中でキリスト教組織への不満や反発が高まる事態になった。
こうした交渉の経緯を察知した警察側が「不測の事態」を警戒して厳しい警戒態勢を打ち出すことになったという。