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新種のオランウータンを密猟と環境破壊から守れ

2017年11月6日(月)20時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

主要紙「コンパス」「テンポ」などと並ぶ「ジャワポス」は特に大きな記事でオランウータンの新種を伝えている。

どの新聞でも伝えている特徴は以下のようなものだ。

1) 個体数は約800

2) タパヌリ中央、タパヌリ南・北の密林に分布

3) 平均寿命は50~60年

4) メスの出産間隔は8~9年

5) メスの初産はだいたい15歳

個体数は研究チームの発表にもあるもが、2)~5)については他のオランウータンのデータから類推したものとみられる。

記事の中で政府の自然保護天然資源エコシムテム総局長は「これまでのところタパヌリオランウータンに関する密猟や周辺の環境破壊は確認されていない」としているものの、今回の大々的な報道により今後、密猟者や森林破壊などの問題が現実になることを懸念する声も出ている。

密猟や森林火災からの保護が緊急課題

ボルネオオランウータンが生息するカリマンタン島には日本人研究者やカナダ人研究者による観察拠点キャンプ、さらに密猟や森林火災から保護されたオランウータンを密林に戻すためのリハビリセンター「ワナリサット」(東カリマンタン州バリクパパン市)などがある。

このうち東カリマンタン州クタイ国立公園内にある日本人研究者の観察拠点ではかつてインドネシア人などが毎日、ジャングル内でオランウータンの個体の追跡観察を続け、1日の行動、家族や集団の動きを膨大なデータとしてまとめる地道な作業を続けていた。

しかし観察拠点近くでも、国立公園内にも関わらず木材の違法伐採による森林破壊が押し寄せるなどオランウータン保護の難しさに直面していた。

インドネシアでは赤ちゃんあるいは子供のオランウータンをペットとして飼育したり、外国の動物園、動物愛好者へ密輸するための密猟が後を絶たない。オランウータンを含めたゴリラ、チンパンジー、ボノボなどの類人猿は全て絶滅の恐れがある野生生物として「レッドリスト」に指定され、保護が喫緊の課題となっている。

特にカリマンタン島、スマトラ島では毎年恒例となっている開発のための森林火災がオランウータンの生息環境を破壊している。特に2015年の森林火災では約170万ヘクタールの熱帯雨林が焼失した。

研究チームも「タパヌリオランウータンは最も絶滅に瀕している大型類人猿である」として環境保護の重要性を発表の中で強調しており、ニュースで沸き返る一方でインドネシア政府による緊急かつ効果的な対策が求められている。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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