最新記事

心理学

相手の感情を感じ取るためには、顔を見るのではなく、耳を澄ました方がいい

2017年10月18日(水)17時20分
松丸さとみ

GlobalStock-iStock

ビデオコールよりも電話が効果的?

相手が何を感じているのかを知りたければ、顔をじっと見るのではなく、耳を澄ました方がいい――ある調査でそんなことが明らかになった。

この結果を受けて、調査を行った米イェール大学経営大学院のマイケル・クラウス博士は、「遠く離れた同僚と理解し合うのは、電話1本で十分かもしれない」と話している。

調査は、アメリカ心理学会発行の学術誌『アメリカン・サイコロジスト』に発表された。

1800人以上を対象に実験を行った。最初の実験では、複数の友達がニックネームについてからかい合う様子が映った短いビデオを使った。ビデオには3つのバージョンがあり、オンラインで募集した参加者にはそのどれかを見てもらう。まずは、音声も映像もあるビデオ。もう1つは、音声のみ。もう1つは音声のない映像のみのものだ。

ビデオを見た(または音声を聞いた)参加者はその後、そこに登場したそれぞれの人物が、「楽しい」、「恥ずかしい」、「怖い」、「悲しい」など23種類の感情について何をどれだけ経験していたと思うか、0から8の点数を付けるよう求められた。

その結果、音声だけを聞かされた参加者が最も正確に登場人物の感情を当てられたという。

感情を伝えるには「何を言うか」ではなく「どう言うか」

次の実験は、イェール大学の学生に参加してもらい、研究室で行った。参加者同士で、好きなテレビ番組や映画、食べ物や飲み物などについて話してもらった。さらに、部屋を暗くして同じような内容の話をしてもらった。

この後、会話をした際の自分の感情と相手の感情について点数を付けてもらったところ、暗い部屋でお互いを見えなかったときの方が、相手の感情を正確に読み取れた。

最後の実験では、オンラインでの参加者に対して、先ほどの実験で使った「ニックネームについてからかい合う会話」をコンピュータ音声で再現した。目的は、もし会話で使われた言葉をもとに感情を読み取れているのだとしたら、デジタル音声からも同じ情報を得られるはずだ、ということを検証するためだ。

しかし、デジタル音声から感情を読み取る実験が最も正確性が低いという結果となった。クラウス博士は、全実験の中で、「人間の音声から感情を読み取る実験結果と、デジタル音声から感情を読み取る実験結果の差が最も大きかった」と説明。「感情を伝えるには、何を言うかではなく、どう言うか、ということだ」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中