相手の感情を感じ取るためには、顔を見るのではなく、耳を澄ました方がいい
GlobalStock-iStock
ビデオコールよりも電話が効果的?
相手が何を感じているのかを知りたければ、顔をじっと見るのではなく、耳を澄ました方がいい――ある調査でそんなことが明らかになった。
この結果を受けて、調査を行った米イェール大学経営大学院のマイケル・クラウス博士は、「遠く離れた同僚と理解し合うのは、電話1本で十分かもしれない」と話している。
調査は、アメリカ心理学会発行の学術誌『アメリカン・サイコロジスト』に発表された。
1800人以上を対象に実験を行った。最初の実験では、複数の友達がニックネームについてからかい合う様子が映った短いビデオを使った。ビデオには3つのバージョンがあり、オンラインで募集した参加者にはそのどれかを見てもらう。まずは、音声も映像もあるビデオ。もう1つは、音声のみ。もう1つは音声のない映像のみのものだ。
ビデオを見た(または音声を聞いた)参加者はその後、そこに登場したそれぞれの人物が、「楽しい」、「恥ずかしい」、「怖い」、「悲しい」など23種類の感情について何をどれだけ経験していたと思うか、0から8の点数を付けるよう求められた。
その結果、音声だけを聞かされた参加者が最も正確に登場人物の感情を当てられたという。
感情を伝えるには「何を言うか」ではなく「どう言うか」
次の実験は、イェール大学の学生に参加してもらい、研究室で行った。参加者同士で、好きなテレビ番組や映画、食べ物や飲み物などについて話してもらった。さらに、部屋を暗くして同じような内容の話をしてもらった。
この後、会話をした際の自分の感情と相手の感情について点数を付けてもらったところ、暗い部屋でお互いを見えなかったときの方が、相手の感情を正確に読み取れた。
最後の実験では、オンラインでの参加者に対して、先ほどの実験で使った「ニックネームについてからかい合う会話」をコンピュータ音声で再現した。目的は、もし会話で使われた言葉をもとに感情を読み取れているのだとしたら、デジタル音声からも同じ情報を得られるはずだ、ということを検証するためだ。
しかし、デジタル音声から感情を読み取る実験が最も正確性が低いという結果となった。クラウス博士は、全実験の中で、「人間の音声から感情を読み取る実験結果と、デジタル音声から感情を読み取る実験結果の差が最も大きかった」と説明。「感情を伝えるには、何を言うかではなく、どう言うか、ということだ」と述べている。