最新記事

アフガニスタン

アフガン撤退から一転、増派へ トランプはなぜ変心したのか 

2017年8月22日(火)19時30分
ケリー・マグサメン(米国務省元国防次官補代理)

だが同時に、アメリカが型通りの関与を続けるべきだとも思わない。アフガニスタン戦争の終結は軍事的手段でなく、主に政治を通じてもたらされるべきだ。トランプ政権の政策は、この点を非常に軽視している。トランプは駐留米軍撤退時期を示さなかったが、改めて駐留の根拠を明らかにすべきだ。

もし米軍兵士の命を危険にさらす覚悟があるのなら、駐留米軍の使命や、軍事的・非軍事的資源の調達先についての説明責任をトランプは果たすべきだ。

トランプの国家安全保障チームは史上初めて、ほとんどのメンバーを元軍人が占めている。それもアフガニスタン戦争を指揮した元司令官ばかりだ。H.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、ジェームズ・マティス米国防長官、ジョセフ・ダンフォード米統合参謀総長、ジョン・ケリー大統領首席補佐官がそうだ。彼らはアフガニスタンでうまくいくことといかないことを大統領に明示できるベテランだ。

自問自答すべき10の質問

トランプと国家安全保障チームはアメリカ国民に対し、以下の10の疑問に答える必要がある。

■アフガニスタンでアメリカは何を成し遂げようとしているのか。戦争が始まってから16年経過したのに、なぜ今後も駐留米軍を維持することが重要なのか。

■開戦当時アメリカがアフガニスタンに侵攻したのは、国際テロ組織アルカイダを倒すためだったが、その目的はほぼ達成された。現在の敵は何者で、敵はアメリカにどんな脅威を与えているのか。

■トランプ政権は撤退の期限を設けたくないと言う。では永遠にアフガニスタンに米軍を駐留させる気か。目的は何か。いずれ撤退させるつもりなら、どんな条件を満たした時か。

■増派によって期待できる有意義で予測可能な成果は何か。それとも失敗を先延ばしにしているだけか。アメリカの「勝利」をどう判断するのか。

■紛争終結時のアフガニスタンの姿はどんなものか。戦争の責任は誰が取るのか。

■アメリカの同盟国は新戦略でどのような役割を担うのか。アメリカはどうやって同盟国から最大限の支持を取り付けるのか。

■アフガニスタンの隣国パキスタンが、米軍の対テロ戦争に協力するよう見せかけながら、他方ではテロ組織の温床になってきた問題を、アメリカはどう解決するのか。

■トランプ政権は中国に、より大きな責任を負わせるのか。それとも中国が今後も南アジアに覇権を広げ続けるのを看過するのか。

■アメリカはこの戦略に対し、十分な財源(と人員)を確保しているのか。今後どのくらい必要になるのか。

■米軍駐留に資源を割き続けることで、アメリカが世界的に被る機会損失は幾らか。なぜアメリカがそうした損失を強いられるのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中