トランプの力を過信して米議会に負けたプーチン、次の一手
ロシアでは「システム」という用語が重要だ。通常は、政府機関や治安部隊、警察、情報機関が社会に及ぼすある種の影響力を示す。米歴史家のスティーブン・コトキンはそれを「非市民社会」と呼んだ。
健全な「非市民社会」(ロシアのエスタブリッシュメント曰く賢明なシステム)とは、選挙を実施し表面的な変化を起こしながら、政府が支配し続ける社会を指す。
ロシア政府関係者の多くは、アメリカでもこのシステムが通用すると確信している。彼らはこのシステムを自由に使いこなすことこそ、アメリカから学んだ重要な教訓だと考えていた。
「システムは必ず成功すると、アメリカ人から教わった」と、ロシアのコンスタンティン・コサチェフ上院国際問題委員長はロシア国営テレビ「ロシア・ワン」のインタビューで語った。
今、ロシア政府関係者は米議会がロソフォビア(ロシア嫌悪)に陥っていると非難する一方、トランプへの批判は控えている。だが先週アメリカが対ロシア制裁強化法を成立させたことで、米ロの関係修復は絶望的になった。ロシアの政策目標は、アメリカの行政府に影響力を及ぼし制裁を一気に解除させることだったからだ。ロシア政府がこの状況で引き下がるとは到底考えられない。
ロシアの次の手は撹乱作戦
ロシア政府はきっと、アメリカの行政府と米議会、政府機関や社会の間にさらなる不協和音を作ろうとする。すぐにロシアが大きな勝利を収めることはないかもしれないが、ロシアの政治家の政治思想の正しさを証明するという意味で、満足感に浸ることはできるだろう。
アメリカの行政府と議会の関係が過度に不安定になれば、ロシアが意見の不一致を指摘しアメリカ政治の「分裂状態」をあざ笑うチャンスが山ほど出てくるのは間違いない。政権内の亀裂を露わにして就任後わずか10日間でトランプに更迭されたホワイトハウスのアンソニー・スカラムッチ広報部長を見れば、すでにそれは明らかだ。
有能な政府はあらゆる政府機関を行政府に従わせる、というのがロシア政府のイデオロギーだ。行政府を議会やメディアといった足かせから解放せよ、そうすれば国民も救われる、という考え方だ。
このイデオロギーに対し、トランプは果たしてどんな立場を取るのだろうか。
(翻訳:河原里香)