日本人ウーバー運転手が明かす「乗客マッチング」の裏側
フルタイムでウーバー運転手をやる人もいれば、西村のように副業としてやることも可能だ。しかし、ウーバー運転手という「ゲーム」を攻略する(=稼ぐ)には、運転の知識やテクニックに加えてサービス業であるという自覚が必須だ。客からの評価が高くても乗車料金は上がらないが、低くなるとリクエスト自体が来なくなる(=稼ぎがなくなる)。
西村は東京生まれ東京育ちだが、アメリカ生活は20年近くになるため英語はペラペラ。その上、サービス精神が旺盛な彼は乗客の年齢層によって話すトピックを変えたり、車内の「空気」を読むのも上手い。
西村の運転手アプリを見せてもらうと、乗客からのコメントに「I love the music」と書かれていたのでどんな曲をかけていたのかと聞くと、「ジブリの音楽とか、戦闘モードがいいというお客さんにはファイナルファンタジーとか」だという。
西村は「すばらしい会話」という項目でもポイントが高く、客からの総合的な評価は星5つのうち「4.87」。この日も、スザンヌをビアガーデンまで送り届けるまでの24分間の会話をそつなくこなし、その後に乗車してきたアルゼンチンから来たという年配の夫妻とも、趣味であるサッカーの話題で盛り上がっていた。人見知りをせず、きめ細やかな「おもてなし」精神がある人ほど、ウーバー運転手向きだろう。
1カ月で192時間走り、5518.75ドル稼いだ
ところで、気になるのは運転手の収入についてだ。午後4時にスタートしたこの日は、スザンヌの24分間の乗車が終わった午後5時の時点で10.57ドル(相乗りを希望していた料金なので安め)。これは、乗客が支払う料金からウーバーが25%のコミッションを引いた額だ。
西村に尋ねると、ウーバー運転手になって初めの1カ月で192時間走りながら客を292回乗せ、稼いだ額は5518.75ドルだったという。時給約3200円なら、たしかに良いアルバイトとも言える。
とはいえ、西村はずっとウーバーの運転手を続けるつもりはない。ウーバーをやり始めたのは、シェアリングエコノミーの仕組みを内部から検証して、ゆくゆくは自分でこのシステムを生かしたビジネスを立ち上げたいからだという。
2010年に設立されたウーバーは今や世界450都市以上にエリアを広げ、5月には乗車回数が50億に達するなどその需要は明らかだが、他方で悪質な企業体質が表沙汰になってCEOが辞任したりと経営面でのスキャンダルが絶えない。
先行きの分からないゲームを闘い続けるより、自分で作ってしまったほうが効率よく稼げる――なるほど、仕組みさえ真似できればこの攻略法が正解なのかもしれない。
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