最新記事

人権問題

米議会で証言した劉暁波支援団体から衝撃の事実と悲痛な訴え

2017年7月18日(火)06時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

劉暁波氏の死を悼む(オーストラリア) Jason Reed-REUTERS

米議会公聴会で証言したワシントンの人権団体が、劉暁波氏の葬儀と海葬に関する当局の恐るべき虚偽報道をメールで知らせてきた。また劉氏の妻、劉霞さん等の救出を呼び掛けてきたので、その一部をご紹介する。

葬儀に列席した劉暁波氏の「友人」は「私服警官」

15日、ノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏が入院していた遼寧省瀋陽市が、記者会見を行い、その日の早朝に近親者や友人が参列する中、葬儀が行われたと発表した。しかし、劉暁波の友人で、劉暁波にノーベル平和賞を授与すべく運動したワシントンにいる人権派弁護士などの支援団体は、当局が「友人」と称する者の中に、友人は一人もいないと知らせてきた。

事実、別の「本当の友人」をフランスのRFI (Radio France Internationale)が取材したが、「当局が示した葬儀に列席した友人の中には、ただの一人も顔見知りの人がいない」と言っている。

メールでは、ここにいるのは「友人」ではなく、友人を装った「私服警官」で、家族が何を話すかを監視するためにいたにすぎないと、激しい憤りを訴えてきた。

また「本当の友人」は、列席を強く希望したが、すべて当局に拒絶されたとのこと。

劉暁波氏は、筆者と同郷で、吉林省長春市生まれだが、長春にいる親戚も大連にいる友人も、誰一人、劉暁波の死去さえ知らされておらず、葬儀が終わった後に知らされたという。

劉霞さんは海葬を望んでいなかった

劉霞さんらの家族は、遺骨を置いた「劉暁波記念館」の建立を望んでおり、一時期は遺体の永久保存さえ希望していたという。まして海に遺灰をばらまくということには強く反対したが、当局は「劉暁波のいかなる痕跡も残させない」という手段を取った。

そのために、あらゆる偽装工作を行なって遺族らに偽証を行なわせた。

西側からの非難を避けるために、劉暁波さんの兄の劉暁光氏に記者会見で当局への謝意を表明させたが、その席に妻の劉霞さんがいなかったのは体調不良のためと言わせている。もちろん劉霞さんは倒れる寸前だが、記者会見に出席しなかったのは当局への謝辞という偽証を行なわなければならないことが耐えられなかったからだという。

劉暁光氏は、「劉暁波は世界にも稀に見る(中国の)ハイレベルの治療を受け、社会主義国家の優越性と、党と政府の温かな思いやりに感謝し、後事もすべて家族の望みどおりに当局が完璧なまでに処置をしてくれた」と中国の「党と政府」に対する感謝の意を述べさせられている。

米議会公聴会――沈黙は共謀だ

このことからも分かるように、劉霞さんたちがこのまま中国に居続ければ、どれだけの厳しい監視下で人権を蹂躙され続けるかは言を俟(ま)たない。

米議会下院外交委員会の小委員会は7月14日、劉暁波氏に関する公聴会を開催し、劉暁波氏のために奔走してきたワシントンの人権団体「公民力量」の創始者である楊建利氏に証言を求めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ホンジュラス前大統領釈放、トランプ氏が恩赦 麻薬密

ビジネス

テスラの中国製EV販売、11月は前年比9.9%増 

ワールド

イスラエル首相「シリアと合意可能」、緩衝地帯設置に

ワールド

黒海でロシアのタンカーに無人機攻撃、ウクライナは関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中