中国発バナナラッシュ 農業基地となったラオスが得たカネと代償
だが同時に、彼らは最も大きな農薬リスクにさらされている。
中国系農園は主に、キャベンディッシュという種類のバナナを栽培している。消費者に人気だが、病気にかかりやすい。
モン族とカム族の労働者は、成長するバナナの株に殺虫剤をまき、パラコートなどの除草剤を使って雑草を駆除する。パラコートは、欧州連合(EU)やラオスを含めた他の地域でも使用が禁止されており、中国では段階的に使用を減らしている。
また、中国への輸送中に傷まないよう、収穫されたバナナは防かび剤に浸される。
耕作の転換
バナナ農園で働く人々のなかには、体重が落ちて虚弱になったり、皮膚病を患っている人がいる、とラオス北部を拠点に活動する非営利団体「開発知識の結束連合会」のディレクターを務めるPhonesai Manivongxai氏は指摘する。
同団体はその啓発活動の一環として、労働者に農薬使用の危険性についての知識を広めている。「私たちにできるのは、労働者の意識を高めることだけだ」とPhonesai氏は語る。
これは困難な活動だ。使用されている農薬のほとんどは中国かタイから輸入されており、使用方法や注意事項はこれらの国の言葉で書かれている。ラベルがラオ語で書かれていたとしても、モン族やカム族には字が読めない人もいるため、理解できない。
もう1つの問題は、労働者の生活環境が化学薬品に近いため、飲み水や生活用水が汚染されていることだと、Phonesai氏は指摘する。
現地の市場で、ロイター記者は、タイ製のパラコートが大っぴらに売られているのを見つけた。
一方で、こうした「代償」を受け入れると話す人もいる。農薬のことは心配だが、高い賃金があれば、子供を学校に行かせたり、よい食べ物を買うことがでいる。
政府がバナナ栽培における農薬使用を取り締まっても、有害な化学物質が全て締め出されることになる保証はない。
生産量が増えてバナナの価格が下落したため、中国人投資家のなかには、ほかの作物に切り替えた人もいる。多くの農薬を必要とするスイカもその中に含まれる。
バナナ農園を共同所有するZhang Jianjunさん(46)によると、ボーケーオのバナナ農園の最大2割がバナナ栽培をやめたと推測する。ミャンマーやカンボジアに移転した同業者もいるという。
だがZhangさんは移転しようとは考えていないという。
ラオスの環境への影響は、「すべての途上国が歩かねばならない道」であり、地元の人は中国人に感謝すべきだ、と彼は語る。「彼らは、『なぜわれわれの生活が改善したのだろう』とは考えない。天の恵みで、生活が自然に改善すると思っているんだ」
(Brenda Goh記者、Andrew R.C. Marshall記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)