最新記事

航空

AIで安心な空の旅をもう一度

2017年5月30日(火)10時30分
ケビン・メイニー(本誌テクノロジー・コラム二スト)

激しい格安運賃競争のツケで、乗客は窮屈で不快、不便な空の旅を強いられている Jodi Jacobson/ISTOCKPHOTO

<顧客サービスを犠牲にした航空業界の価格競争はもう限界。人工知能を使ったオンデマンド予約が救世主に?>

航空機から引きずり降ろされたり、パイロットから殴られたり。安さ第一の航空会社選びが主流になり、乗客と航空会社の関係は険悪になる一方だ。そんななか、人工知能(AI)のような新技術が関係改善に一役買うかもしれない。

エクスペディアやトラベロシティといったオンライン旅行代理店で航空券を予約する人が増え始めたのは、今から約20年前。それまでは旅行代理店に電話するのが主流だった。

従来型の代理店の場合、スタッフが旅行会社向けコンピューター予約システムの情報から利用者のニーズに合うフライトを探す。そうしたシステムでは、主に目的地までの飛行所要時間に基づいてフライトがランク付けされていた。運賃は所要時間や、航空会社のブランドの強さと並ぶ判断材料の1つにすぎなかった。

一方、オンライン旅行代理店で重視されるのは常に運賃。利用者がそれ以外のアドバイスを代理店に期待することはめったにない。利用者は何度も運賃ランキングをチェックし、アラートを設定。航空会社が格安運賃を発表する頃を見計らって、一番安い航空会社を選ぶのだ。

だから航空会社はあの手この手で安い運賃を提示し、かつ利益も確保しようとする。そのツケは乗客に回ってくる。窮屈な足元スペース、超過手荷物料金、超過勤務に嫌気が差してヒステリックに叫ぶ客室乗務員......。

「オンライン旅行代理店は航空業界の競争の本質を変えた。所要時間ではなく運賃が重要になった」と、テルアビブ大学(イスラエル)のイタイ・アテル講師と、経済コンサルティング会社コンパス・レキシコンのユージーン・オルロフ上級副社長は12年の論文で指摘した。

アテルらによれば、価格優先の航空券購入の増加に伴い、フライトの遅延も増加している。航空会社が質より安さで勝負しなければならなくなったからだ。「インターネットは航空会社の業績や、質の高いサービスを提供しようとする意欲にとってマイナスかもしれない」と、アテルらは指摘している。

【参考記事】ユナイテッド航空だけじゃない、サイテーの航空会社

「格安」のプレッシャー

航空会社が現状を変えたいと思っても、それは無理だ。オンラインで簡単に運賃を比較できるため、「割高だが質の高いサービス」を提供するのは不可能に近い。検索結果の1ページ目から締め出されてしまうからだ。

航空会社は深刻な泥沼に陥っている。97年と比べて航空運賃(インフレ調整後)はほとんど変わらないのに、石油価格は60%近く上昇(燃料費は航空会社にとって最大のコストだ)。なのに価格競争のプレッシャーが強く、運賃を値上げできないから、座席を狭くし、超過料金で稼ぐしかない。

ネットでレストランやアパートを検索するときのように、航空券も利用者が自分好みの条件を入力して検索できるようになれば状況が変わるかもしれない。そう語るのは、『スーパー消費者』の著者で成長戦略に詳しいエディ・ユン。例えば足元スペースの広さ、乗務員のサービス、機内食の質についてのレビューの星の数などだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送フーシ派がイスラエル攻撃、イエメンの親イラン武

ワールド

再送-UAEのアブダビで5人負傷、火災も発生 ミサ

ワールド

タイ新政権、来週発足へ アヌティン首相が表明 

ビジネス

中国の大手国有銀3行、25年の利益ほぼ横ばい 不動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 2
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 9
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 10
    「酷すぎる...」ショッピングモールのゴミ箱で「まさ…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中