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北朝鮮ミサイル実験「失敗」の真相

2017年4月27日(木)11時00分
ジェフリー・ルイス(軍縮問題専門家)

いつの世にも、政治的な圧力が効かない現実を認めるのは難しいものだ。長年にわたり「絶対に受け入れられない」としてきた現実(北朝鮮の核武装)を受け入れざるを得ない日が近づいている今は、なおさらだ。

「空想」を少しでも長く

北朝鮮のミサイル危機は長い時間をかけて進行してきた問題だが、アメリカ国民はなぜか今になって初めて、それを意識している。彼らは無力感を覚え、政府が何かをしてくれることを期待している。

そんな彼らには、トランプ政権の打ち出した強硬姿勢でも何一つ変わらないという事実を受け入れる準備ができていない。どこかで誰かがひそかに国を守ってくれていると信じたいのだ。

もう1つの理由は、米共和党支持者がどうしてもトランプを応援せずにいられないことだ。アメリカ人の半分は、トランプについていくのは危険だと確信している。だが一方にはトランプ(と共和党)の熱心な支持者がいて、あの男は実力以上の役職に就いてしまった単なるペテン師ではないと、何とか信じ続けたいと願っている。

だから彼らは、トランプが「北朝鮮にミサイル実験など行わせない」とツイートした後にミサイル実験が行われ、それが失敗に終わると、その予想外の幸運を「トランプのおかげ」だと持ち上げたがる。これは心理学者の言う「根本的な類推の誤り」、つまりカルト教団の信徒によく見られる現象だ。

【参考記事】北朝鮮ミサイル攻撃を警戒、日本で核シェルターの需要が急増

全ては危険な空想だ。現実は違う。トランプ政権は訳が分からずに結局はオバマ政権やブッシュ政権が依拠したのと同じ戦略にすがり、新しい服を着せているだけだ。こんなアプローチの行き着くところは絶望的な麻痺状態、つまり戦略的な奇跡を忍耐強く待つことだ。

それでもハッキングの夢を見続ければ、しばらくは絶望のどん底に落ちないでいられる。北朝鮮のミサイル発射実験の失敗は拡大し続ける軍事的脅威の「生みの苦しみ」ではなく、アメリカの力や知恵、それに優れたテクノロジーの証しなのだと想像することができる。

「ハッキングによって、北朝鮮のミサイルの脅威を阻止することができる」――そう信じるアメリカ人は、見たくない現実から目を背けている。失敗しているのは北のミサイルではない、アメリカの政策だ。

From Foreign Policy Magazine

[2017年5月2&9日号掲載]

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