最新記事

携帯電話

日本で鍛えられた「中華スマホ」の代表格ファーウェイ

2017年4月18日(火)18時27分
佐野正弘(モバイルジャーナリスト)※東洋経済オンラインより転載

「ローカライズ」が最大の課題だった

それでも、ユーザーの確固たる支持を得ることができない。むしろ台湾・エイスースなど後発メーカーの躍進を許すこととなってしまった。

その最大の理由はローカライズ(地域のニーズに合わせて改良すること)にある。ファーウェイはまだ規模が小さい日本市場に向けたカスタマイズに積極的でなく、グローバルモデルをほぼそのまま持ち込み、ローカライズもその国の言語に対応することくらいしか行わなかった。

当時大きな問題に発展したのが、ドコモの保有する周波数帯「800MHz(メガヘルツ)帯」に端末が対応していなかったことだ。この周波数帯は「プラチナバンド」と呼ばれ、地方や山間部のエリアカバーにフル活用されている。だが、この周波数帯は海外であまり使われていないことから、ファーウェイは対応に消極的だった。

このことは「日本全国で快適に使えないのではないか」という懸念を呼び、ユーザーからの評価を大きく落とす要因となった。

ようやくファーウェイが800MHz帯の重要性を認識し、対応を進めたのは2015年発売の「HUAWEI P8lite」「HUAWEI P8Max」からだった。周波数帯の面でライバルメーカーに追いついたことで、純粋に端末の品質や機能・性能が評価されるようになり、ファーウェイ端末の人気は急速に高まったのである。

そして先に述べたように、2016年には「P9」など数多くのヒットを飛ばし、ユーザーの支持を獲得。日本市場に定着しつつあるというわけだ。

toyokeizai170418-4.jpg

日本のSIMフリー市場で最も勢いがあるファーウェイ。日本事業を担当するのがデバイスプレジテントの呉波氏。今後どんな端末を投入するのだろうか(著者撮影)

国内外で追い風、スマホ市場を席巻できるか

ファーウェイの躍進はしばらく続きそうだ。今年2月、スペインの携帯通信関連見本市「モバイル・ワールド・コングレス」でP9の後継機種となる「HUAWEI P10」を発表し、こちらも高い評価を得るなど、世界的に注目度が高まっている。

加えて日本国内でも、低価格志向の強まりによって格安スマホを利用するユーザーが増えており、SIMフリースマホ市場全体の成長は力強いものがある。

紆余曲折を経ながらも、地道に日本市場との「対話」を続けてきたファーウェイ。国内外からの追い風を受け、その勢いは今後一層強まるといえそうだ。

toyokeizai170418-5.jpg

周波数帯の問題が解消された「P8lite」はSIMフリースマホ市場でファーウェイ初のヒットモデルとなった(著者撮影)

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ

ワールド

中国、EU産豚肉関税を引き下げ 1年半の調査期間経

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中