ベネズエラ、マドゥロ政権による自主クーデターの顛末
なぜ、今このタイミングで、このような判決が出されたのか? そもそも、最高裁はすでに国会の議決は全て違法という判決を出しており、事実上、議会を無効化しているので、あえて今、それを明文化する理由が不明。そのため様々な憶測が飛び交う。
例えば、副大統領タレク・エルアイサミなど政府高官がなんら反応しない中、影の実力者であるディオスダド・カベジョはただ一人この判決を讃える声明を発表していた。それを受け、ディオスダドがチャベス派内で敵をあぶり出すために仕組んだ混乱なのではないか?という噂があった。
3月31日
長年のチャベス支持者で、マドゥロ政権を司法面から支えてきた司法長官ルイサ・オルテガが、ベネズエラの国営放送VTVで今回の最高裁の判決を批判するという、またまた前代未聞の出来事発生。プロパガンダしか流さないVTVで、政府高官が政府批判などありえないし、しかもそれを拍手する聴衆まで放送されて、ほとんど放送事故状態。
さらにこの夜、ロイターが爆弾記事を投下。
内容は、金欠のベネズエラ政府がPDVSAの債務支払いのためにロシアのロスネフチに資金援助を求め交渉しているというもの。4月12日の支払額はおよそ30億ドル近くで、ロスネフチと6億ドルのローンを交渉中だという。つまり、ベネズエラ政府は全然お金が足りてないっぽいと。
そして、その夜マドゥロが評議会召集し、最高裁の判決を取り消す。
ただし、これは国会の立法権を最高裁が行使するという点だけで、それ以外の部分、炭化水素法を巡る部分は変更なし。
というわけで、ことの顛末は以下のようなものではないか、と考えられます。
12日の支払い期限が間近に迫るも、ベネズエラ政府は支払いのための資金が大幅に不足していた。払えなければデフォルトなので、早急にどこかからお金を借りなければならない。
このような中で、唯一お金を貸してくれそうなのがロスネフチ。ただし、お金を借りるための手続きを進めるには国会の承認が必要。だが、国会はこれを承認するはずがない。そこで国会の承認を得なければならないことを定めた炭化水素法の手続きが邪魔だった。なので、その部分を変更する判決を最高裁が出した......。
つもりだったが、急いで判決文を書いたせいなのか、書いた人が若いインターンだったのか、勢い余って「国会の権限を停止する」という文面になってしまった(冗談でなく、現在のマドゥロ政府における人材不足問題は深刻です)。