最新記事

べネズエラ

ベネズエラ、マドゥロ政権による自主クーデターの顛末

2017年4月4日(火)21時58分
野田 香奈子

なぜ、今このタイミングで、このような判決が出されたのか? そもそも、最高裁はすでに国会の議決は全て違法という判決を出しており、事実上、議会を無効化しているので、あえて今、それを明文化する理由が不明。そのため様々な憶測が飛び交う。

例えば、副大統領タレク・エルアイサミなど政府高官がなんら反応しない中、影の実力者であるディオスダド・カベジョはただ一人この判決を讃える声明を発表していた。それを受け、ディオスダドがチャベス派内で敵をあぶり出すために仕組んだ混乱なのではないか?という噂があった。

3月31日

ベネズエラ国債急落

長年のチャベス支持者で、マドゥロ政権を司法面から支えてきた司法長官ルイサ・オルテガが、ベネズエラの国営放送VTVで今回の最高裁の判決を批判するという、またまた前代未聞の出来事発生。プロパガンダしか流さないVTVで、政府高官が政府批判などありえないし、しかもそれを拍手する聴衆まで放送されて、ほとんど放送事故状態。

さらにこの夜、ロイターが爆弾記事を投下

内容は、金欠のベネズエラ政府がPDVSAの債務支払いのためにロシアのロスネフチに資金援助を求め交渉しているというもの。4月12日の支払額はおよそ30億ドル近くで、ロスネフチと6億ドルのローンを交渉中だという。つまり、ベネズエラ政府は全然お金が足りてないっぽいと。

そして、その夜マドゥロが評議会召集し、最高裁の判決を取り消す。

ただし、これは国会の立法権を最高裁が行使するという点だけで、それ以外の部分、炭化水素法を巡る部分は変更なし。


というわけで、ことの顛末は以下のようなものではないか、と考えられます。

12日の支払い期限が間近に迫るも、ベネズエラ政府は支払いのための資金が大幅に不足していた。払えなければデフォルトなので、早急にどこかからお金を借りなければならない。

このような中で、唯一お金を貸してくれそうなのがロスネフチ。ただし、お金を借りるための手続きを進めるには国会の承認が必要。だが、国会はこれを承認するはずがない。そこで国会の承認を得なければならないことを定めた炭化水素法の手続きが邪魔だった。なので、その部分を変更する判決を最高裁が出した......。

つもりだったが、急いで判決文を書いたせいなのか、書いた人が若いインターンだったのか、勢い余って「国会の権限を停止する」という文面になってしまった(冗談でなく、現在のマドゥロ政府における人材不足問題は深刻です)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、人質遺体を新たに引き渡し 停戦合意履行巡る

ビジネス

米国株式市場=続伸、ダウ664ドル高 利下げ観測高

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、精彩欠く指標で米利下げ観測

ワールド

ウクライナ、和平合意へ前進の構え 米大統領「意見相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中