北京を超えた世界最悪の汚染都市ウランバートル
ウランバートルではこの冬、大気汚染に関連した子供の肺炎が激増し、市内の病院はどこも満杯になった。モンゴル全体でも、汚染関連の肺炎が乳幼児の死因の第2位で、全体の15%を占めている。
サイモン・フレーザー大学(カナダ)のライアン・アレン准教授が11年に発表した論文によると、ウランバートルでは住民の死亡の1割が大気汚染に関連した疾患によるものだという。
モンゴル全体では心肺疾患による死亡の29%、肺癌による死亡の40%が大気汚染関連とみられるとの報告もある。
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人口集中に打つ手なし
ウランバートルでは冬には気温が氷点下30度まで下がる。ゲルで暮らす人々にとって、ストーブなしの生活はあり得ない。
それでも汚染のひどさにたまりかね、首都の住民は今年に入って2回大規模な抗議デモを決行した。1月末には氷点下20度の極寒の中、マスクをした大勢の人々が黒い風船を手に都心に集結。旧ソ連の影響下にあったウランバートルでは今でもデモはめったに起きないが、健康被害の深刻さが人々を行動に駆り立てた。
ウランバートルの地形も汚染を悪化させる一因だと、アレンは言う。「山に囲まれた盆地で、あまり風が吹かないため、汚染された空気が滞留しやすい」
事態を見兼ねて民間の支援団体も動き始めた。「14年以降、(民間機関が)リアルタイムの大気汚染情報を発表している。WHOも公報で汚染状況を市民に知らせるようモンゴル政府に働き掛けている」と、WHOモンゴル事務所の広報担当デルゲルマー・バンヤは言う。
クラウドファンディングで資金を集め、啓発活動を行い、マスクの配布や空気清浄機の寄贈に取り組む団体もある。3万7000ドルを集めて病院や学校に100台の空気清浄機を贈る運動では、5日間でほぼ4台の購入資金に相当する1400ドルが集まった。
ただ残念ながら、マスクは気休めにしかならないと、ロンドン大学インペリアルカレッジで大気汚染管理の講義を行うオードリー・ドネイゼルは言う。PM2.5のような微小粒子はマスクを通過して肺の中まで入り込むからだ。