最新記事
宇宙

2つの銀河をつなぎ止めるダークマターが見えた!

2017年4月13日(木)15時40分
ハナ・オズボーン

初めて可視化されたダークマター(赤い部分) S. Epps & M. Hudson / University of Waterloo

<回転する銀河の星々が遠心力で散ってしまわないのは、見えないダークマターが存在するからだと仮定されていた。今回それが、銀河をつなぐ橋のような姿を見せた>

数十億光年かなたの宇宙空間で、ダークマター(暗黒物質)の無数の「糸」が2つの銀河をつなぎ止めている――そんなドラマチックな画像が初めて公開された。目に見えない謎の物質が織り成す巨大な網の目が宇宙をまとめていることを裏づける画像だ。

暗黒物質は宇宙の27%を占める。通常の物質、つまり恒星など光学的に観測できる物質が占める割合は5%にすぎない。残りは暗黒エネルギーで、これが宇宙の膨張を加速させていると考えられている。

暗黒物質があることは、銀河に与えている影響か予測されていた。観測できる物質の質量だけでは、銀河の回転による遠心力が重力を上回り、どんどん加速して星々がばらばらに飛び散ってしまうはずだ。暗黒物質の質量を仮定すれば、この矛盾は解消する。

【参考記事】宇宙国家「アスガルディア」構想が始動:軌道上から地球を防衛、国民も募集中

とはいえ、暗黒物質は輝かないし、光を吸収せず、反射しないため、観測不可能だ。その正体は何か、宇宙にどう分布しているのか。宇宙を操る黒子は今も謎に包まれたままだ。

時空の歪みから「見る」

カナダのウォータールー大学の研究チームは特殊な合成画像で、暗黒物質が銀河をつなぎ止めている様子を可視化することに成功した。

「暗黒物質のフィラメント(繊維状の物質)が巨大な網の目のような構造を織り成し、銀河をつなぎ止めていることは数十年前から予測されていた」と、論文の共同執筆者マイク・ハドソンは述べている。「この画像のおかげで我々の研究は予測を超え、実際に見て測れるものになる」

【参考記事】人類共通の目標に大きな一歩、NASAが地球と似た惑星を7つ発見

チームの論文はイギリスの学術団体「王立天文学会」が毎月発行している紀要で発表された。ハドソンらは、ハワイの天文台などで撮影された2万3000枚超の画像を用いて弱い「重力レンズ効果」を解析。45億光年先にある銀河のペアを取り巻く暗黒物質を可視化した。

重力レンズ効果とは、惑星やブラックホールなど、近傍にある物質の質量で時空が歪み、光が曲がる現象で、暗黒物質の検出にも利用できる。チームは画像を重ね合わせ、暗黒物質の分布を示すマップを作成。その重力が2つの銀河をつなぎ止めていることを明らかにした。こうした構造が可視化されたのはこれが初めてだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マスク氏のチャットボット、反ユダヤ主義的との苦情受

ワールド

ロイターネクスト:シンガポール、中国・米国・欧州と

ビジネス

日経平均は続伸、円安が支え 指数の方向感は乏しい

ビジネス

イオンが決算発表を31日に延期、イオンFSのベトナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中