全人代、党大会控え人心安定優先――習政権の苦渋にじむ
成長率を大きめに設定すると投資が盛んになってバブルが起きる可能性があり、不動産価格の高騰などを招く。低く見積もれば経済が減速したとして国際的な影響をもたらし、中国の国内に対しても不安定要素をもたらす。
今年は秋に第19回党大会が待ち構えているため、不安定化しない程度に高揚感を保つ必要がある。
それを中国語では「穏中求進」(穏やかな中にも前進をする)という言葉で表して、今年の政権スローガンの一つにしている。政府活動報告にも出てきたが、5日の午後、習近平国家主席が上海代表団と会談し、そこで何度も使っている。
人民の不満を警戒
何よりも目立ったのは、李克強首相が報告の中で人民に不満があることを認めたことだ。そのため都市部における新規就業者数目標を1100万人としたり、農村部の1300万人以上を都市部に定住させたり、医療保険への財政補助を増やしたり、空気の汚染に代表される環境対策を強化するために「藍天保衛戦」(青空を保つ戦略)という言葉を繰り返した。
さらに携帯電話料金やデータ通信に関しては、国内長距離の上乗せ料金を年内に廃止すると宣言し、慣例の間合いの決まった拍手ではなく、珍しく自発的拍手が起きた。さらに貧困脱却や格差の是正、医療、高齢化問題、食品安全、民工とその留守家族問題、若者が創業する際の法的保障など、民生向上のための対策を数多く打ち出している。
民法総則に対する改正案を閉幕(3月15日)までに討議する。これは1986年に制定されたもので、30年間におよぶ社会の劇的な変化に適応していない。
「三去一降一補」――供給側構造改革に着手するスローガン
中国では今、「三去一降一補」というスローガンが流行っている。3月5日の政府活動報告の中にも出てきた。これは「供給側(サプライ・サイド)の構造改革」を指し、「三去」は「生産過剰を解消(除去)する」「在庫過多を解消(除去)する」「テコ入れ(レバレッジ)を除去する(やめる)」で、「一降」は「コストを引き下げること」、「一補」は「弱点を補う(補足支援する)こと」である。