全人代、党大会控え人心安定優先――習政権の苦渋にじむ
中国政府関係者にこのたびの中国の国防費に関して聞いたところ、以下のような回答が戻ってきた。
1. アメリカの国防費は中国の3倍以上あるのに、なぜ中国の国防費だけを問題にするのか。GDP成長率が、アメリカや日本、あるいはヨーロッパ諸国に比べて非常に大きいことは全く無視している。軍事費は絶対額ではなく、GDP比で考えるべきだ。GDP比から言っても、アメリカは3.5%前後で、日本だって1%近い。GDP比で見なければおかしい。
2. それに、中国の軍事力なんて、とてもアメリカには遠く及ばない。日本にだって、陸軍はまだしも、海軍となると技術的には日本の方が遥かに上だ。アメリカの航空母艦に至っては10隻以上。中国はたった「遼寧」1隻しか持ってない。その中国に、何を脅威など感じてるんだい?アメリカに追いつきたいとは思っていたとしても、追い越すなんて、夢のまた夢だよ。
3. 1人当たりのGDPで計算すると、日本の国防費は、中国の4倍だってことに気づいているだろうか?中国の人口は約14億。日本は約1億。一人当たりのGDPが同じだとすれば、中国の国防費の絶対額が日本の14倍を超えたときに、初めて脅威を覚えればいい。今はその時じゃない。
しかし、いま警戒していなければその時はいずれやってくるし、中国の膨張主義と領土問題に関する強引な主張を心配しない日本人はいないだろう。
それに中国としては台湾問題と北朝鮮問題に関して軍事強国になっておかなければならない、せっぱ詰まった事情があるはずだ。前者は今年1月12日のコラム「中国、次は第二列島線!――遼寧の台湾一周もその一環」に書いたように、第二列島線までを照準に定めているだろうし、また2015年2月22日のコラム「いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD」に書いたように、「いざとなったら、北朝鮮を武力弾圧するために」備えておかなければならないだろう。(なお、1人当たりGDPに関する計算は確認していないし、そういう論理でもないだろうと思われるので、これに関する分析は、ここではしない。)
GDP成長目標「6.5%前後」を想定――「穏中求進」
李克強国務院総理は5日の政府活動報告の中で、中国の今年のGDP成長目標を「6.5%前後」にするとした。昨年の全人代では、「2016年の成長目標を6.5%~7.0%とし、2016年から始まる第13次5カ年計画では年平均6.5%以上」と定めている。そのことから考えると、早くも「6.5%」という「年平均」の値に合わせたことになる(昨年は6.7%)。