最新記事

中国政治

全人代、党大会控え人心安定優先――習政権の苦渋にじむ

2017年3月6日(月)22時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国政府関係者にこのたびの中国の国防費に関して聞いたところ、以下のような回答が戻ってきた。

1. アメリカの国防費は中国の3倍以上あるのに、なぜ中国の国防費だけを問題にするのか。GDP成長率が、アメリカや日本、あるいはヨーロッパ諸国に比べて非常に大きいことは全く無視している。軍事費は絶対額ではなく、GDP比で考えるべきだ。GDP比から言っても、アメリカは3.5%前後で、日本だって1%近い。GDP比で見なければおかしい。

2. それに、中国の軍事力なんて、とてもアメリカには遠く及ばない。日本にだって、陸軍はまだしも、海軍となると技術的には日本の方が遥かに上だ。アメリカの航空母艦に至っては10隻以上。中国はたった「遼寧」1隻しか持ってない。その中国に、何を脅威など感じてるんだい?アメリカに追いつきたいとは思っていたとしても、追い越すなんて、夢のまた夢だよ。

3. 1人当たりのGDPで計算すると、日本の国防費は、中国の4倍だってことに気づいているだろうか?中国の人口は約14億。日本は約1億。一人当たりのGDPが同じだとすれば、中国の国防費の絶対額が日本の14倍を超えたときに、初めて脅威を覚えればいい。今はその時じゃない。

しかし、いま警戒していなければその時はいずれやってくるし、中国の膨張主義と領土問題に関する強引な主張を心配しない日本人はいないだろう。

それに中国としては台湾問題と北朝鮮問題に関して軍事強国になっておかなければならない、せっぱ詰まった事情があるはずだ。前者は今年1月12日のコラム「中国、次は第二列島線!――遼寧の台湾一周もその一環」に書いたように、第二列島線までを照準に定めているだろうし、また2015年2月22日のコラム「いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD」に書いたように、「いざとなったら、北朝鮮を武力弾圧するために」備えておかなければならないだろう。(なお、1人当たりGDPに関する計算は確認していないし、そういう論理でもないだろうと思われるので、これに関する分析は、ここではしない。)

GDP成長目標「6.5%前後」を想定――「穏中求進」

李克強国務院総理は5日の政府活動報告の中で、中国の今年のGDP成長目標を「6.5%前後」にするとした。昨年の全人代では、「2016年の成長目標を6.5%~7.0%とし、2016年から始まる第13次5カ年計画では年平均6.5%以上」と定めている。そのことから考えると、早くも「6.5%」という「年平均」の値に合わせたことになる(昨年は6.7%)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国11月製造業PMI、2カ月連続で50上回る 景

ワールド

焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで6週間ぶり高値、日銀利上

ワールド

ゼレンスキー氏、陸軍司令官を新たに任命 内部改革の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える新型ドローン・システム
  • 3
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 4
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 5
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    定説「赤身肉は心臓に悪い」は「誤解」、本当の悪者…
  • 8
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 9
    「すぐ消える」という説明を信じて女性が入れた「最…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中