最新記事

デンマーク

欧米でブームの「ヒュッゲ」で日本人も幸せになれる?

2017年3月27日(月)15時51分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

hyuggebook170327_pic1.jpg

家族・親戚が一堂に会するデンマーク人家庭のクリスマスランチ(写真提供:兼高佐和子)

デンマーク人のメンタリティと「ワーク・ライフ・バランス」

先日発表された「世界幸福度報告書2017」によると、長年保持していた幸福度ランキングのトップの座をノルウェーに譲り渡したものの、デンマークは2位(日本は51位)。欧州委員会による幸福度指数でも、デンマークの幸福度は40年連続でトップに君臨している(ヘレン・ラッセル『幸せってなんだっけ?』より)。では、なぜデンマーク人は幸福なのか?

デンマーク人は時間の使い方のプロであるという。仕事にプライベートは持ち込まず、逆にプライベートにも仕事を持ち込まず、「オン・オフ」をはっきりさせる。そのため時間のムダは徹底的に省かれ、それが労働時間短縮につながり、結果として生産性の高さは世界トップクラスにある。

「仕事とヒュッゲは一番離れたところにあるかもしれません。融通が効かないと思うことも多々あるのですが(笑)、自分のペースを守り抜く頑固さがあり、そのオン・オフの徹底がデンマーク人の幸せの秘訣だと思います」と大辺氏は言う。

デンマーク人を突然食事に誘っても、OKをもらえないことについては兼高氏も指摘する。自分のペースを乱されることは断固拒否し、自分のペースを保ち続けるための努力を惜しまない。それが厳しい自然環境の北欧で生き抜く知恵であり、ワーク・ライフ・バランスを保つ礎(いしずえ)にもなっているのだ。

幸福度ランキング51位の日本人も幸せになれる?

しかし、さまざまなランキング指標におけるデンマーク人の幸福度の高さ、そして日本人の幸福度の低さについては疑問があると大辺氏は言う。

「長引く不況にあっても、物質的にも社会的にも、日本人はデンマーク人に負けず劣らず恵まれています。しかし、自分が幸せであることを口に出すことを日本人は躊躇します。謙虚な気持ちゆえかもしれませんが、『自分はそんなに幸せではない』と振る舞います。結果、自分は幸せではないと本当に思い込んでいるのではないでしょうか」

デンマーク人は些細なことに幸せを見出し、一つひとつの小さなことに幸せであると言って憚らない。このデンマーク人のポジティブ思考を日本人が見習ってもいいのではないかと大辺氏は提案する。

【参考記事】途上国型ワーカホリックから、いまだに脱け出せない日本

では、日本人はどうしたら幸福度を上げることができるのか?

「ヘレン・ラッセルさんも著書で触れていますが、『選択肢を減らす』はひとつの重要なポイントだと思います。日本はモノに溢れ、選択肢の多い社会です。選択肢が多すぎるせいか、他人と比較して自分は何を持っていないのかとネガティブに考えがちです」

このように自分に何がないのかではなく、自分がすでにもっているものについて改めて考えてみると、思っていた以上に多くをもっていることに気づかされる。これがデンマーク人の考え方であり、「ヒュッゲ」の哲学なのだ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中