受験格差が中国を分断する
江蘇省の抗議活動は、地方都市の中流層の利害を代弁するものだ。彼らは過剰に守られている(と自分たちが感じる)貧しい地方に対する軽蔑と、一番おいしいところを持っていく豊かな大都市への反感の板挟みになっている。そして、共産党の重要な政治的支持基盤でありながら、最近は自分たちの利益のために大きな声を上げるようになっている。
抗議行動を研究する清華大学の呉強(ウー・チアン)講師(政治学)は、今回のような出来事が中流層の政治的連帯感を強化する方向に働いていると指摘する。「政治については長い間、中流層は発言権も力も持っていなかった。彼らのために声を上げる人間もいなかった」
だが、それも最近は変わってきたと、呉は言う。変化の大きな要因はソーシャルメディアの登場だ。大学入学枠削減問題のように中流層の経済状態や地位を脅かす「事件」が起きると、彼らはソーシャルメディアを使って不満をぶちまけたり、デモを組織できるようになった。
例えば、人気モバイルアプリ微信(ウェイシン)(WeChat)の「南京受験生の親たち」というアカウントには、江蘇省の入学枠削減を不公平だと批判する投稿が並んでいる。ある投稿主は「高考の入学枠削減、(最も苦しむのは)なぜいつも中流層なのか?」と訴えた。
入学枠の削減に最も強く反発したのが中流層だったのは、「本当の大物たち(上流層)がとっくに中国の教育を見捨てている」ことの表れだと、この人物は主張。その例として、大富豪の王健林(ワン・ジェンリン)の息子・王思聰(ワン・スーツォン)が小学校から大学まで外国で教育を受けたことを挙げた。
この投稿主によれば、上級役人の80%以上が子供を海外に留学させているという。数字の真偽は不明だが、「大物たち」が中国の教育を見捨てたという見方が広がっている事実は、自分たちは中国の教育制度の内部に閉じ込められているという意識が中流層の間で強まっていることを示している。
南京の中学校に通う娘がいる42歳の林(仮名)も、大学の入学枠削減を階級格差の問題として捉えている。彼女はアメリカのイラク戦争を例に挙げてこう説明した。「イラク戦争を始めたのはブッシュ政権だが、兵士の大部分は中流層以下の出身だった。祖国のために自分の命を犠牲にする上流層の人間はほとんどいない」
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不公平な競争より海外へ
林の娘エイミーはまだ中学2年生だが、大学受験のことを考えると今から気が重い。江蘇省から重点大学に入学できる9%の枠に入れないのではないかと心配しているのだ。
だから林は、娘をアメリカの大学に留学させたいと考えている。かつて海外留学は超富裕層の特権だったが、過去10年間で上位中流層や一般の中流層の間でも珍しくなくなってきた。