最新記事

ベネズエラ

ベネズエラへ旅立つ前に知っておくべき10のリスク

2017年3月14日(火)19時24分
野田 香奈子


9. 暴動や略奪はいつ起きてもおかしくない



ENCOVI(ベネズエラの生活状態に関する世論調査)によると、ベネズエラでは2016年に貧困層82%(2014年が48%)、うち極貧層が52%(2014年は24% )と急増しています。

そして国民の73%が、自分の意志に反して、平均で8.7kgも体重を減らしているあり様です。


外貨を闇両替できる旅行者がベネズエラで食べ物に困ることはありません。このように、外貨にアクセスできるごく一部の特権的な人々が問題なく食事にありつける一方で、それができない圧倒的多数の国民はますます飢え、貧しい子供たちが危機に直面しているのが現状です。

こうした中、ベネズエラでは至る所で抗議や商店・食料輸送用トラックの襲撃が起きています。またマドゥロがいつまた高額紙幣廃止のような劇的な変化を伴う政策を実施するかわかりません。つまり、街全体、あるいは国全体を巻き込んだ大規模な暴動や略奪がいつ起きてもおかしくないということです。

昨年12月のシウダボリバルの暴動は、まさに地獄でした。このような略奪行為は一度始まると一気に広がり、治安当局には止めようがありません。このときの略奪では中国系ビジネスが狙われ甚大な被害を受けました。暴動になったら見た目の似ている日本人が狙われる可能性は否定できません。

【参考記事】「セルフ・ダンピング」で苦境に陥るベネズエラの食料輸入事情


10. 一寸先は闇



昨年10月に大統領罷免選挙の可能性が消えベネズエラの政治状況はこれまでと全く異なるフェーズに入りました。ベネズエラの反政府派野党は、チャベス登場以来初めて、「何を達成すれば政権交代できるか」という目標を完全に失ったのです。野党は分裂しており、国民に対して今後の具体的な方向性をなんら示せていません。

同時に、国民生活の窮状、食料不足が2017年に改善する兆しはなく、国民の不満は増すばかりです。

政情は極めて不透明かつ不安定です。クーデターの噂もあります。

どれほど毎日ニュースを見ても、情報をSNSで細かくチェックしても、ベネズエラで明日何が起きるのかは誰にもわかりません。そして、残念ながら、ここにあげた状況は今後悪化することはあっても、現時点で良くなる見通しはまったくないのです。

以上、ベネズエラへの旅行を考える人が行くべきか否かを判断する材料となれば幸いです。

 

※当記事は野田 香奈子氏のブログ「ベネズエラで起きていること」の記事を転載したものです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

ゼレンスキー氏が19日にトルコ訪問、ロシアとの交渉

ビジネス

日産、九州工場で24日から再び減産計画 ネクスペリ

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で一時9カ月半ぶり高値、高市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中