「セルフ・ダンピング」で苦境に陥るベネズエラの食料輸入事情
何ひとつ商品がない冷蔵ケースは見慣れた光景となっているカラカス市内のスーパーマーケット(2016年 ロイター/Ivan Alvarado)
<ベネズエラでは物不足、食料不足が深刻化の一途を辿り、市民による襲撃事件や抗議運動が起きている。その原因は「国が決めた基本食品や日用品を低価格で国民に提供する」という社会主義国家特有の価格統制を、政府の一部の人間が悪用しているからだ>
ベネズエラの物不足、食料不足は日に日に深刻さを増し、最近ではお腹を空かせた人々による襲撃事件や抗議運動がベネズエラ中で毎日のように起きています。
なぜベネズエラでは食料が不足するのでしょうか?原因はベネズエラが食料を輸入に頼っていることにあります。では、なぜベネズエラは外貨不足の中でもなお食料の生産よりも輸入を促進し続けるのでしょうか?それは、食料輸入を担う政府の一部の人が、輸入(あるいは輸入をしたふりをすること)によって莫大な利益を得ているからです。
ベネズエラでは、チャベス時代から国が決めた基本食品や日用品を低価格で国民に提供する政策が進められてきました。この価格統制によって、ベネズエラ国民は恩恵を受けるどころか、首を絞められているのです。
この記事はもともと今年の2月にCaracasChroniclesで公開されたものですが、現状に合わせて内容を一部更新して再公開します。
"ボリバル紙幣は印刷できても、食料は印刷できない
You Can Print Bolivars, But Not Food
2016年2月12日 (2016年6月15日更新)Pedro Rosas Rivero
【参考記事】崩れゆくベネズエラ ── 不穏な政治状況、物不足と連日の襲撃事件
「ベネズエラの状況は人々が自覚している以上に悪化するだろう。」これはすでにベネズエラの経済学者にとっては恐ろしい呪文のようになっている。現在の食料不足もひどいが、今後はもっとひどくなるだろう。政府が直面している米ドル財政には巨大な穴が開いている。対外債務に関するいかなる決断にも関わらず、その調整は、文字通り、国民の胃袋を通して実行されている。
今年の初めに評論家らは警鐘を鳴らし始めたのだが、それにはちゃんとした理由があった。ただし、当初の概算は(それがかなり厳しいものであったにも関わらず)、今ではありえないほど楽観的だったことが証明された。ほとんどの人は、政府は2016年には輸入総額を昨年に比べ約25%削減すると考えていた。しかし、最近になって経済担当副大統領は政府は輸入額を少なくても45%、できれば60%まで削減するつもりだと発言した。これはこの13年間見たこともない水準にまで輸入額が下げられるということだ。