最新記事

ベネズエラ

「セルフ・ダンピング」で苦境に陥るベネズエラの食料輸入事情

2016年6月20日(月)12時28分
野田 香奈子

何ひとつ商品がない冷蔵ケースは見慣れた光景となっているカラカス市内のスーパーマーケット(2016年 ロイター/Ivan Alvarado)

<ベネズエラでは物不足、食料不足が深刻化の一途を辿り、市民による襲撃事件や抗議運動が起きている。その原因は「国が決めた基本食品や日用品を低価格で国民に提供する」という社会主義国家特有の価格統制を、政府の一部の人間が悪用しているからだ>


ベネズエラの物不足、食料不足は日に日に深刻さを増し、最近ではお腹を空かせた人々による襲撃事件や抗議運動がベネズエラ中で毎日のように起きています。

なぜベネズエラでは食料が不足するのでしょうか?原因はベネズエラが食料を輸入に頼っていることにあります。では、なぜベネズエラは外貨不足の中でもなお食料の生産よりも輸入を促進し続けるのでしょうか?それは、食料輸入を担う政府の一部の人が、輸入(あるいは輸入をしたふりをすること)によって莫大な利益を得ているからです。

ベネズエラでは、チャベス時代から国が決めた基本食品や日用品を低価格で国民に提供する政策が進められてきました。この価格統制によって、ベネズエラ国民は恩恵を受けるどころか、首を絞められているのです。

この記事はもともと今年の2月にCaracasChroniclesで公開されたものですが、現状に合わせて内容を一部更新して再公開します。




"ボリバル紙幣は印刷できても、食料は印刷できない
You Can Print Bolivars, But Not Food
2016年2月12日 (2016年6月15日更新)Pedro Rosas Rivero

【参考記事】崩れゆくベネズエラ ── 不穏な政治状況、物不足と連日の襲撃事件


「ベネズエラの状況は人々が自覚している以上に悪化するだろう。」これはすでにベネズエラの経済学者にとっては恐ろしい呪文のようになっている。現在の食料不足もひどいが、今後はもっとひどくなるだろう。政府が直面している米ドル財政には巨大な穴が開いている。対外債務に関するいかなる決断にも関わらず、その調整は、文字通り、国民の胃袋を通して実行されている。

 今年の初めに評論家らは警鐘を鳴らし始めたのだが、それにはちゃんとした理由があった。ただし、当初の概算は(それがかなり厳しいものであったにも関わらず)、今ではありえないほど楽観的だったことが証明された。ほとんどの人は、政府は2016年には輸入総額を昨年に比べ約25%削減すると考えていた。しかし、最近になって経済担当副大統領は政府は輸入額を少なくても45%、できれば60%まで削減するつもりだと発言した。これはこの13年間見たこともない水準にまで輸入額が下げられるということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P最高値更新、オラクル株急

ワールド

米政権、金融当局刷新へ 規制負担軽減で成長促進=財

ワールド

トランプ氏、中国との協力と日本との同盟「両立可能」

ワールド

ゼレンスキー氏、米に新たな和平案提示 「領土問題な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 8
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中