「線路立ち入りで書類送検」が他人事でなくなる侵入禁止リスト
■罰金50万~1万円
<空港の滑走路などへの無断立ち入り>
(航空法150条3号の3・53条3項)
→ このほか、空港の着陸帯(滑走路周辺の敷地)、誘導路、エプロン、格納庫などに、みだりに立ち入ることも禁じられている。
<高速道路・有料道路への無断立ち入り>
(高速自動車国道法30条・17条・18条、道路法105条・48条の11・48条の15)
→ ただし、立ち入りですぐに犯罪となるわけでなく、退去命令が出ても従わない場合に処罰される。命令を出すのは、高速道路では道路管理者(NEXCO)、有料道路では国土交通大臣とされている。
■過料5万円以下
<原爆ドームへの無断立ち入り>
(広島市公園条例19条2号・5条5号)
→ 地方自治体が独自に規制している例である。そのほか、全国各地の漁港などで、地元の自治体が独自に立入禁止区域を設定している例がみられる。
■拘留29日~1日 または科料(9999円以下) あるいは拘留と科料の両方
<廃屋・廃船などへの無断立ち入り>
(軽犯罪法1条1号)
→ 人が管理していない空き家や廃墟などに、正当な理由なくひそむ行為を処罰する規定である。
<行列への割り込み>
(軽犯罪法1条13号)
→ 日本の法体系においては、マナー違反では済まず、犯罪となる。行列の中へ「威勢を示して」横入りしたり、列を乱したりする行為を処罰する。
<他人の田畑や立入禁止場所への無断立ち入り>
(軽犯罪法1条32号)
→ 「田畑」の持ち主について、農業のプロかアマかは問われないので、他人の家庭菜園への立ち入りも含まれると考えられている。また、果樹園もここにいう「田畑」に含まれる。
看板などで「立入禁止」と明確に示されていなくても、柵やロープなどで空間が区切られている場所や、施錠されたクルマの中、回送中の電車内も、軽犯罪法でいう「立入禁止場所」と解釈される可能性がある。
クルマの運転手や同乗者でもないのに、用もなく月極駐車場やコインパーキングに立ち入る行為も、本来は犯罪である。ただ、駐車場の自動販売機でジュースを買ってその場で飲むぐらいなら、おとがめ無しであろう。
■科料(9999円以下)
<線路への無断立ち入り>
(鉄道営業法37条、罰金等臨時措置法2条3項)
→ なお、すでに廃線となった線路への立ち入り行為は、鉄道営業法違反にはならずとも、「立入禁止場所への立ち入り」(前出の軽犯罪法違反)となりうる。廃線の線路が敷かれている土地は依然として鉄道会社が所有している場合があるし、別の企業などに譲渡されていることもある。自由に入っても構わないとの掲示がない限り、念のために許可を取っておきたい。
【参考記事】ニッポン名物の満員電車は「自然となくなります」
こうした罰則をいちいち列挙することは、一見するとバカバカしい。「どうして、滑走路より線路のほうが、こんなに刑罰が軽いのか。立ち入る行為の危険性は大して変わらんだろう」などの疑問も残るのだが、こうしたルールを正確に知っておかない限り、いつ何どき、警察官に逮捕や書類送検をされてもおかしくない。
たくさんの「いいね!」やリツイート欲しさにSNSに掲載した、たった1枚の写真のせいで、一瞬にして社会的な信用性が崩壊するリスクは誰にでもある。
罰則を知ることは、自由を知ることでもある。
[筆者]
長嶺超輝(ながみね・まさき)
ライター。法律や裁判などについてわかりやすく書くことを得意とする。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)の他、著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)――こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。ブログ「Theみねラル!」