最新記事

キャリア

英語やプログラミングより「ファイナンス」を始めなさい

2017年2月1日(水)17時43分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 私がここで言いたいのは、投資銀行家がどうこうという話ではなく、ファイナンスだけわかっていても、事業家として大成しないということです。事業家として成功するには、ファイナンスを用いて事業の本質を見極め、新たな利益を創造していく能力が必要なのです。そして、そのような能力は、数式だけエクセルで追いかけていても身につくものではありません。ビジネスの当事者となり、ファイナンス×事業の「本気のぶつかり稽古」を行って初めて身につけることができるものなのです。

 ここで3つ目の大きな勘違いについてまとめておきましょう。

「ファイナンスは、それだけわかったからといってお金を生み出せるような錬金術ではない」

 ファイナンスを勉強したからといって、お金持ちになれるわけではありません。ファイナンスはお金に対する考え方を教えてくれるものであり、お金儲けが上手になるためのツールではないのです。

 むしろ、世の中に錬金術などというものは存在せず、お金というものにロジカルにきちんと向き合っていけるようになることがファイナンスを学ぶ意義なのです。そして、その考え方を事業に活かしてはじめて、ファイナンスを学んだ意義が出てくるのです。もちろん、お金を稼ぐ、あるいは事業を行って利益を出すにはファイナンスの知識は必ず必要になってきます。

 先述のソフトバンクアカデミアの話に戻りますが、社長室在籍で、実際にアカデミアのランキングで首位にいた方は「ファンドマネージャーの資質がない人は、ソフトバンクの後継者には100%なれない」と断言しています。

 M&Aなどの大きなディールで莫大な利益を出そうと思えば、ファイナンスの知識なしに実現することは不可能です。

 ただ、ファイナンスは優秀な事業家になるきっかけにはなり得ますが、ファイナンスを習得するだけでその域に到達することはできません。

 またもやウォーレン・バフェット氏の言葉になりますが、「事業家であるがゆえにより良い投資を行うことができ、投資家であるがゆえによりよい事業を行うことができる」のです。

 ファイナンスと事業、両方そろってはじめて意味を成すのです。

今から始めるのなら「プログラミング」より「ファイナンス」

 ここまで本書を読み進めてみて、みなさんはどのような感想をお持ちでしょうか。

 今まで思っていたことと今聞いたファイナンスはまったく違うな、と感じているかもしれません。

 特殊スキルだと思っていたファイナンスが、実はただの教養である。ややこしいと思っていたものが実は単純なものである。ファイナンスを理解したからといって、それだけでは良い事業家になるには不十分だ。

 これまでのイメージと大きく異なることに驚きを隠せない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私が今述べてきたことは、紛れもない事実なのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中