ロボット時代の倫理感は? 人とロボットのラブ・セックス・バイオレンス
こういったレベルにおけるロボットと人との触れ合いは、多くの人たちにとって不快なものだろう。たとえば、ロボットとのセックスについて考える学会が2015年11月にマレーシアで開かれる予定だったがが、その1カ月前の10月、警察庁長官が学会は違法であると宣言し、同国の道徳やロボット文化についての保守性が明らかになるなか、学会の開催が突然キャンセルとなった。次の学会は、12月にロンドンで開催される予定だという。また、「セックスロボット反対キャンペーン」などという団体も存在し、そういったロボットの到来がそう遠い未来ではないことを予感させる。
その団体は、「セックスロボットの開発は、人が互いの関係のみを通じて体得できる"共感"をさらに損なうことになる。セックスロボットの開発が社会にいい影響を与えるかどうかについて、我々は懐疑的であり、むしろ力による不平等や暴力を助長する」と、考えているという。
また、逸脱した性欲の扱いに関した法的研究者ですら次のように主張している。
「子どもに対する性的暴力や搾取を避けるためにも、このテーマについて理解することはとても大切だ。ラブドールにAIが備わるのは時間の問題だろう。その結果、何が起こるだろう? リアルなテクノロジーが問題を減らす助けになるのだろうか? それとも悪化を促すのだろうか? 欲望のままに実現するのではなく、事前にそのテクノロジーの影響を明らかにしなければならない。十分に検証がなされなかった場合、大きな代償を払うことになるだろう」
これは特定の人のみに関わる問題ではない。世界中の人々に大きな影響を及ぼす、人類全体の存在を揺るがす問題であると言えるだろう。
ロボットと暴力について
さらに、ロボットはまだ知能を持ったアンドロイドではないが、すでに人間に対して危害を加えることに加担しているという事実は知っておいたほうがいいだろう。ドローン、つまり空飛ぶロボットだが、これは市街地や戦場で武装した無人機を攻撃するために活用されている。
アメリカでは、先日ダラスで発生した警官5人を殺害し7人を負傷させた爆破事件の容疑者ミカ・ジョンソンを殺害するためにドローンが使われた。この一件は、ロボティックデバイスが今後どのように使われるか、ということに関して新たな前例を提示した。
参考記事:ダラス警官銃撃の容疑者は爆発物も準備、他にも大規模攻撃計画か
「これは米国初となる、警察が容疑者を遠隔の爆発物で殺害したというケースになる。銃火器やその他の殺傷力が警察によって行使されることは、残念ながら米国ではありふれたことだが、ロボットを使ってのケースは前例がない」
もし軍や警察が、冒頭に述べられている「危害を加えない」という規則の例外にあたるのであれば、今後どういった前例が生まれるだろう?
軍や警察のオペレーションとして殺人をおこなうためのロボットを作るうえで、ロボットに関する倫理はどのような役割を担うのか。技術的に進歩し、今まさに広がっているロボットの用途に、「倫理」は今後追いついていくことができるのか。時間だけがそれを教えてくれるだろう。