最新記事

ロボット

ロボット時代の倫理感は? 人とロボットのラブ・セックス・バイオレンス

2016年12月19日(月)21時40分
ReadWrite[日本版]編集部

 こういったレベルにおけるロボットと人との触れ合いは、多くの人たちにとって不快なものだろう。たとえば、ロボットとのセックスについて考える学会が2015年11月にマレーシアで開かれる予定だったがが、その1カ月前の10月、警察庁長官が学会は違法であると宣言し、同国の道徳やロボット文化についての保守性が明らかになるなか、学会の開催が突然キャンセルとなった。次の学会は、12月にロンドンで開催される予定だという。また、「セックスロボット反対キャンペーン」などという団体も存在し、そういったロボットの到来がそう遠い未来ではないことを予感させる。

 その団体は、「セックスロボットの開発は、人が互いの関係のみを通じて体得できる"共感"をさらに損なうことになる。セックスロボットの開発が社会にいい影響を与えるかどうかについて、我々は懐疑的であり、むしろ力による不平等や暴力を助長する」と、考えているという。


セックスロボットがお目見えするのも間近か? (c) The New York Times / Youtube

 また、逸脱した性欲の扱いに関した法的研究者ですら次のように主張している。

「子どもに対する性的暴力や搾取を避けるためにも、このテーマについて理解することはとても大切だ。ラブドールにAIが備わるのは時間の問題だろう。その結果、何が起こるだろう? リアルなテクノロジーが問題を減らす助けになるのだろうか? それとも悪化を促すのだろうか? 欲望のままに実現するのではなく、事前にそのテクノロジーの影響を明らかにしなければならない。十分に検証がなされなかった場合、大きな代償を払うことになるだろう」

 これは特定の人のみに関わる問題ではない。世界中の人々に大きな影響を及ぼす、人類全体の存在を揺るがす問題であると言えるだろう。

ロボットと暴力について

 さらに、ロボットはまだ知能を持ったアンドロイドではないが、すでに人間に対して危害を加えることに加担しているという事実は知っておいたほうがいいだろう。ドローン、つまり空飛ぶロボットだが、これは市街地や戦場で武装した無人機を攻撃するために活用されている。

 アメリカでは、先日ダラスで発生した警官5人を殺害し7人を負傷させた爆破事件の容疑者ミカ・ジョンソンを殺害するためにドローンが使われた。この一件は、ロボティックデバイスが今後どのように使われるか、ということに関して新たな前例を提示した。

参考記事:ダラス警官銃撃の容疑者は爆発物も準備、他にも大規模攻撃計画か

「これは米国初となる、警察が容疑者を遠隔の爆発物で殺害したというケースになる。銃火器やその他の殺傷力が警察によって行使されることは、残念ながら米国ではありふれたことだが、ロボットを使ってのケースは前例がない」


ダラス警察は狙撃犯をロボットで殺害 (c) ABC News / Youtube

 もし軍や警察が、冒頭に述べられている「危害を加えない」という規則の例外にあたるのであれば、今後どういった前例が生まれるだろう?

 軍や警察のオペレーションとして殺人をおこなうためのロボットを作るうえで、ロボットに関する倫理はどのような役割を担うのか。技術的に進歩し、今まさに広がっているロボットの用途に、「倫理」は今後追いついていくことができるのか。時間だけがそれを教えてくれるだろう。

 

footerlogo.png
ReadWrite[日本版]編集部

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米9月小売売上高0.2%増、予想下回る EV駆け込

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=

ビジネス

ECBの政策「良好な状態」=オランダ・アイルランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中