ハラール論争で見えた中国人の「イスラム嫌い」
Xiao Lu Chu/GETTY IMAGES
<イスラム教徒向け食品「ハラール」の不正表示対策を求める声が、中国のネット上で激しいヘイトスピーチに火を付けた>(写真:「清真(ハラール)」の食品を販売する陝西省西安の店)
ここ半年ほど、中国のソーシャルメディアで過激な反応を引き起こしている問題がある。
それは、中国人のイスラム教徒がハラールフード(イスラム教の戒律にのっとって処理された食品)の偽装表示対策を求めていることだ。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」には、こうした要求をテロと同一視し、要求を聞き入れれば国内のイスラム教徒の過激化を招くと決め付ける声が渦巻いている。
偽ハラール・フードへの法規制を求める運動を主導するのは、少数民族の回族の人々だ。中国最大のイスラム教徒グループで、人口は1000万人を超す。イスラム教徒は「ハラール認証」の表示を頼りに食品を買うが、悪徳業者による偽装表示が絶えず、不信感は募る一方。そこで、回族たちは不正表示対策の導入を求めているのだ。
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まっとうな主張に思えるが、これが大衆の不安に火を付けた。「シャリーア(イスラム法)の浸食」に対する怯えと反発が拡大している欧米と同様に中国でも、イスラムの価値観や生活習慣がじわじわと社会に広がりつつあるという恐怖心が根を張り始めているのだ。
「イスラム恐怖症」は学者の間にも見て取れる。偽ハラールフード対策の法整備を求める主張は「民族対立を生み出し、国の安全を破壊し、政治的権利と利益をさらに奪取しようとするもの」だと、元中国社会科学院のマルクス思想研究家である習五一(シー・ウーイー)は言い切る。
テロへの恐怖が背景に
このような主張がまかり通る背景には、この2年ほどの間に、一部の中国人がイスラム教徒を脅威と見なすようになったという事情がある。