最新記事

差別

日本人の無自覚な沖縄差別

2016年11月4日(金)19時00分
安田浩一(ジャーナリスト)

Koichi Yasuda

<機動隊員の「土人」発言も、沖縄の米軍基地・撤退問題が聞き入れられないのも根は同じ。沖縄蔑視だ> (写真は、高江に配備された機動隊)

 少なくとも米軍ヘリパッド建設が進められる高江(沖縄県東村)で反対運動に参加している市民にとって、機動隊員の「土人」「シナ人」発言に唐突感はなかった。機動隊員の暴言はいまにはじまったことではない。

「バカ」「気持ち悪い」「犯罪者」「ババア」──。こうした言葉が日常的に飛び交っていた。

「暴言の類は珍しくない。我々は最初から敵として扱われている」

 そう話すのは高江でヘリパッド建設反対運動を続けている沖縄平和運動センターの大城悟事務局長だ。

 地元(東村)村議の伊佐真次氏も「高江に常駐する機動隊には市民運動を敵視する体質がある。けっして機動隊個人の資質の問題ではない」と指摘する。

「土人」発言に多くの沖縄県民が憤っているのは、そこに沖縄への蔑視と偏見を見るからだ。

 一部には反対派市民の罵声を取り上げ「どっちもどっち」と論ずる向きもある。確かに機動隊員個人の人格を貶めるような罵声は慎むべきだろう。だが、圧倒的な公権力を持った側と対等に並べることじたいがおかしい。ましてや差別発言解消の責務を負った公務員の発言であればこそ許されるものではない。

県民に対する侮辱

 10月28日、沖縄県議会は「県民に対する侮辱」だとする抗議・意見書を可決した。意見書は次のように訴えている。

<「土人」という言葉は「未開・非文明」といった意味の侮蔑的な差別用語であり、「シナ」とは戦前の中国に対する侵略に結びついて使われてきた蔑称である。この発言は、沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじり、県民の心に癒やしがたい深い傷を与えた。沖縄戦では本土防衛の捨て石にされ、戦後27年間は本土から切り離され米軍占領下に置かれ、そして今なお全国の米軍専用施設面積の74%が集中しているもとで沖縄県民は基地あるがゆえの事件事故に苦しめられ続けてきた。今回の発言は、沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いたものと言わざるを得ない>

 また、翁長雄志知事も会見で、他都府県警から派遣の機動隊員について「引き取ってもらいたいという気持ちはある」と述べ、県外機動隊の撤収に初めて言及した。

          *****

 差別発言の"舞台"となった高江の米軍北部訓練場の正式名称は「ジャングル戦闘訓練センター」である。文字通り、ジャングルでの対ゲリラ戦に備えた訓練場だ。

 60年代、ここではベトナム戦を想定した訓練がおこなわれていた。敷地内にはベトナムの集落を模した「ベトナム村」がつくられ、高江の住民も"現地人"役を務めるために動員された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 A

ビジネス

ANA、国内線65便欠航で約9400人に影響 エア

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    香港大規模火災で市民の不満噴出、中国の政治統制強…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中