レストラン経営者「私はヒラリーの大ファンだ」
メキシコからの移民を「レイプ犯」と呼び、イスラム教徒に差別主義的な発言を繰り返すトランプは、非白人のマイノリティから見ればアメリカを怒りによってさらに分断させる存在でしかない。
マイノリティ社会におけるトランプへの反感は支持率上でも明らかで、ピュー・リサーチセンターによる8月の世論調査によれば、黒人の85%はクリントン支持(トランプ支持はわずか2%)、ヒスパニックの50%がクリントン支持(トランプ支持は26%)だった。一方で、白人の支持率はトランプが45%と、クリントンの33%を上回っていた。
黒人の間でのクリントン支持は、夫であるビル・クリントンが南部アーカンソー州出身の大統領として黒人社会との距離を縮め、「初の黒人大統領」と呼ばれるほど人気だったことも理由だろう。ウィルソンも、経済を好転させて黒人社会にも恩恵をもたらした元大統領の手腕を、妻であるヒラリーに期待していた。
しかし、マイノリティからの支持がクリントンにとって確固たる強みになるかどうかは、蓋を開けてみないと分からない。すべては、マイノリティの有権者が実際に投票するかどうかにかかっているからだ。
08年にバラク・オバマが初の黒人大統領になったときには、黒人有権者の投票率は04年の60.3%から65.2%へと飛躍的に伸びた。ヒスパニック有権者の投票率も47.2%から49.9%に伸びたが、白人有権者のそれは67.2%から66.1%に落ちていた。
08年、黒人有権者はオバマに対する積極的な支持から投票所に向かったのに対して、今年はクリントンへの熱心な支持というより、ウィルソンのようにトランプへの拒否感が動機付けとなるケースも多いだろう。マイノリティ社会がどれほど熱心にクリントンを支援しているか――それは11月8日の投票結果で明らかになる。
本誌は10月上旬、ニューヨーク州でトランプ支持者とクリントン支持者の声を聞くべく、一般人への取材、撮影を行った。ここで紹介したメルバ・ウィルソンを含む11組の有権者から聞き出した「本音」とポートレートを、本誌2016年11月1日号(10月25日発売)の写真連載Picture Powerにて掲載している。
撮影:Q.サカマキ
写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争----WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。 http://www.qsakamaki.com
本誌ウェブサイトで「Imstagramフォトグラファーズ」連載中
※当記事は2016年11月1日号
p.42~47の「Picture Power」の関連記事です。