最新記事

2016米大統領選

最後のテレビ討論の勝敗は? そしてその先のアメリカは?

2016年10月20日(木)15時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 もう一つはシリア上空における「飛行禁止区域の設定」という問題だ。現在の情勢では、この設定を実効あるものにするには、アサド政権軍のレーダーなど地上施設の破壊が必要だし、禁止措置を徹底する中で、それが守られない場合は自動的に空中での戦闘に発展する危険性もある。あくまでブラフなのか、それとも「一戦交える覚悟」なのか、注意して見守る必要があるだろう。

 核拡散の問題も話題になったが、トランプは依然として、「日本、韓国、サウジ」が自主武装に移行する中で核兵器保有を容認するという主張を繰り返していたし、そこにドイツも加えていた。日米安保条約の再交渉も示唆しており、ここまで一貫して言い続けると、仮に当選した場合には「本当に何かを仕掛けてくる」こともあり得る。いくら議会が歯止めになるにしても、日本としてはあらためて警戒が必要だろう。

【参考記事】なぜビル・クリントンは優れた為政者と評価されているのか

 その他、経済問題では相変わらずトランプは富裕層減税によるトリクルダウン経済で成長を、という立場。これに対してヒラリーは「ITなどのニューエコノミー」重視の立場は「テレビ討論では触れず」にいたが、最低賃金アップなどの左派ポピュリスト的な表現で、ミドルクラスの再建による経済成長を、という主張。自由貿易に関しては、トランプは相変わらず反対し、ヒラリーは是々非々という主張だった。

 仮に一部の声として「トランプ優勢」という声があるにしても、軍事外交に関しては、以上のようなやり取りであって、決して優勢でも何でもない。トランプの発言が余りにバカバカしいので、ヒラリーはいちいち反論しないまま時間切れになり、そうした印象を与えただけだ。これに加えて「投票結果に疑義も」という発言は、厳しい批判を受ける可能性があり、トランプとして劣勢挽回には失敗したという評価が直後から出ている。討論の勝敗に関するCNNの簡易世論調査でも、52%がヒラリー勝利、トランプ勝利は39%と差がついた。

 ということは、そろそろ「ヒラリー政権に備える」ために、日本としては彼女の政策に関して詳しく知っておくことが必要になる。とりわけイラクとシリアへの対応に関して、オバマ政権のような「優柔不断」な態度ではないということなら、では具体的にヒラリーのアメリカはどう動くのか、国際社会として真剣に注視する必要が出てきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア軍攻撃で2人死亡、ウクライナ南部オデーサ 港

ビジネス

独IFO業況指数、2月予想以上に上昇 現況・先行き

ビジネス

仏ルノー、商用EV合弁フレクシスを完全子会社化へ

ワールド

ゴールドマン、26年第4四半期の原油価格見通しを引
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 3
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中小企業の「静かな抵抗」
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 7
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 10
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中