最新記事

経営

ダメな会社には「脳外科手術」が必要だ

2016年10月14日(金)12時02分
ジョー・ディバンナ ※編集・企画:情報工場

bakhtiar_zein-iStock.

<企業などの組織には環境の変化に応じた変革が求められるが、変革を実行するのはたやすいことではない。組織は、いわば脳と同じ。その変革には、脳外科手術に必要なのと同じぐらいの手順が必要だ。また、脳科学の成果から組織に役立てられることも多い>

 人体の神経系は、それぞれ役割が異なる4つの構成要素(中枢神経系、副交感神経系、交感神経系、末梢神経系)からなっており、それらが互いに連携することで私たちの行動は決定される。そしてこれは、企業などの組織が機能を発揮するメカニズムによく似ている。

 組織における施策や各種運用手続きは、人体で言うところの「自律神経系」によって動かされている。自律神経は、無意識のうちに働く重要な諸機能を司る。組織では、料金支払い、売掛金回収、賃金台帳作成など、定期的に(多くは毎日)発生する業務がこれにあたる。組織の各部門の動きは経営環境の変化に影響される。それは人体が外部刺激により変化するようなものだ。経営層は組織が変化に適応できるように諸手続きを進め、その変化が収益に影響を与えないように調整する。

 人体の自律神経系は2種類に分けられる。交感神経系と副交感神経系だ。交感神経系は、心拍の加速や血管の収縮、血圧上昇などを司る。組織で言えば、急に製品の人気が出て注文が殺到するような、ポジティブな変化への対応がこれにあたる。組織の交感神経系が働いた結果、生産力が上昇したり、取引量が増えたりする。

 副交感神経系も、交感神経系と同じように働く。ただしこちらは心拍を落ち着かせる。また、腸の働きを活発にするとともに分泌腺を刺激し消化を助ける。これはマネジメントになぞらえれば、経済活動が沈滞あるいは下降ぎみの時の動きだ。人員削減やコストカット、業務プロセス最適化に重点が置かれる時、組織の副交感神経系が働いている。

組織の「手術」にミスは許されない

 組織のリーダーは、経済状況の急変に対応してしばしば改革を行う必要に迫られる。注文が大幅に減った時にはコスト削減に舵を切らなければならないし、大型契約がまとまった際には新しい業務プロセスの開発が求められる。新興国市場でビジネスを展開するとなれば、サプライヤーや顧客と、より緊密な関係を築くことが必要になるかもしれない。顧客満足のために業務プロセスを(現地と)同化させることが成功のキーになるからだ。さまざまな外的要素が経営の現状を抜本的に変革する触媒として働く。

 人体でも似たようなプロセスが働く。たとえば寒い、暑いなどの感情を引き起こす外的刺激が触媒となり、人体に化学反応が起きる。そしてそれが身体や心のあり方を変えていく。自己変革ができる個人は、こうしたプロセスを自分に有利になるようにうまく使う術を心得ている。健全に成長する組織も同じだ。

 組織が変わろうとしても、その中にいる個々人に変革の意欲が欠けているのならば、彼らは組織の中の「抗体」になる。そして、あたかも人体が異物を排除するように、率先して変革しようとする機運を削ぎ、遅らせ、妨害する。ほとんどのケースで、こうした「変革への抵抗」は無意識のうちに行われる。

【参考記事】ダン・アリエリーが示す「信頼される企業」の5要素

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中