人類が完全なる人工心臓を手にする日はどこまで近づいた?
重症心不全で心臓のポンプ機能を置き換えることが必要な患者はアメリカで数万人、日本でも数千人と言われている。(c) ReadWrite[日本版]編集部
我々は人工股関節置換や補聴器などの人工物の移植によって人々の健康をより増進させる時代を生きている。
フランスの企業 Carmatは、人工心臓の開発に15年間取り組んでいる。この人工心臓は、末期の心臓病を患い、手術をしなければ余命2週間もない人たちの心臓を丸ごと取り換えることのできる装置である。つまり、完全埋め込み型全置換型の人工心臓だ。彼らは2013年に臨床実験を開始している。
先日、彼らはヨーロッパでの認証を受けるため、2017年に2度目の挑戦をおこなうと発表した。Carmatの人工心臓は、末期の心不全の患者が移植手術待ちの間をつなぐために使う一時的なものを目標としているのではない。ドナーを待つ期間を延長させることはもちろん、患者の退院やさらには職場復帰さえ可能にすることを目指している点で他社のデバイスとは異なっている。
どのように動作するのか
Carmatの設計では2つの心室がそれぞれ皮膜に隔てられており、片側は作動液で満たされている。モーターポンプにより作動液が心室から出たり入ったりし、皮膜を動かし血液を循環させる仕組みだ。血液に触れる面はウシの心臓を覆う膜から採取された組織でできており、デバイス自体は生体適合性のあるものにしている。
Carmatの人工心臓はウシの心臓組織から作られた弁も採用しており、昇圧を検知するセンサーも組み込まれている。その情報は内部コントロールシステムに送られ、患者が運動したときなど血流の需要の高まりに応えて流量をコントロールする。
人工心臓は動力源、モニター設備、病院のコントロールシステムといった外部システムと接続されており、術後の期間や通院中、また退院するときに身に着けられる動力源兼コミュニケーションシステムとして機能する。