最新記事

アメリカ社会

オルタナ右翼とゲーマーゲートと呼ばれる事件の関係

2016年9月21日(水)17時45分
八田真行(駿河台大学経済経営学部専任講師、GLOCOM客員研究員)

Mike Segar-REUTERS

<ドナルド・トランプの一部の支持層として、オルタナ右翼(alt-right)と呼ばれるの右翼・保守思想が注目を集めているが、オルタナ右翼と反フェミニズムが結びついた背景には、ある事件があった...>

 以前の記事(alt-right(オルタナ右翼)とはようするに何なのか)でも書いたが、オルタナ右翼ことalt-rightに統一されたイデオロギーは存在しない。移民反対など、個々の政策でだいたい方向性が一致しているものはいくつかあるが、むしろ彼らが共有しているのは、ある種の「気分」のようなものだと思う。その気分とはようするに、「自分たちは不当に迫害されている」という思い、悪く言えばある種の被害妄想である。

 白人あるいは西洋の文化が多文化主義のリベラルによって脅かされている、と思う人はアイデンティタリアニズムを支持し、理性を愛する知的な人々が有象無象の愚民どもに抑圧されていると思う人は新反動主義に奔る。政治や文化、メディアにおいてこうした様々な「迫害」の武器となっているのがポリティカル・コレクトネスで、ゆえに彼らはこれを極めて敵視するわけだ。

【参考記事】:レイシズム2.0としての「アイデンティタリアニズム」
【参考記事】:アメリカの「ネトウヨ」と「新反動主義」

 また、ポリティカル・コレクトネスをものともせずに公の場で好き放題言い続け、それでも大統領候補にまでなったドナルド・トランプは、その点で、あるいはその点でのみ、彼らの英雄なのである。さらに、一応被害妄想扱いはしたけれど、そこに一片の真実が含まれていないわけでもないということが、事態をいよいよややこしいものとしている。

 ところで、オルタナ右翼関係のウェブサイトや掲示板などを見ていると、かなりの頻度で女性に対して極めて侮蔑的な言説を目にすることになる(例を挙げようかと思ったが、おそらく多くの人が不愉快になるので止める)。このような、女性蔑視ないし女性嫌悪の性向のことをミソジニー(misogyny)と呼び、オルタナ右翼の一つの特徴とされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中