最新記事

民主政治

インターネットで政治は変わる? 海賊党・欧州議会議員と考える「液体民主主義」の可能性

2016年9月5日(月)17時20分
Rio Nishiyama

日本で液体民主主義は可能なのか

 ブロックチェーンのモデルを参考にし、分散型ネットワークを政治的意思決定の場に応用させることをめざした「液体民主主義」。このような政治のあり方は、日本で可能なのか?液体民主主義を実現させるための課題は?さまざまなポイントがパネリストからあげられた。

 まず、教育の問題。「民主主義は学ばれなければならない(Democracy has to be learned)」という言葉があるが、多くの人が集まって公共善を追求していくプロセスは、共同体構成員の論理的思考力や社会問題への関心の高さなど、さまざまな前提が必要とされる。それらの前提を抜きにして形式だけ導入された民主主義は容易にポピュリズムになってしまったり政策とは無関係の個人的な諍いに陥ってしまうため、注意が必要だ。その点で日本ではまだ、自分が属するコミュニティのなかで民主的に物事を決めたり、熟議を重ねるという教育が行き届いていない。それどころか、論理的に自分の考えを主張し、交渉し、合意を形成するという教育とは真逆の教育方針が敷かれている。この教育システムをまず第一に変える必要がある、という強い声が上がった(実際に、2020年のセンター試験廃止・記号式テスト廃止など、この教育システム改革の動きはすでに始まっているそうだ)。

 次に、共同体のサイズが液体民主主義の成功におおきく関係する、という意見。トクヴィルの古典「アメリカの民主政治」によれば、1830年のアメリカがなぜ理想的な民主主義を実現させていたかというと、小さな市町村レベルで熟議・掛け合いによる民主主義の実践が多数行われており(タウンシップ・デモクラシー)、その小さな成功例が多数集まった結果として連邦政府が存在していたからなのだという。考えてみれば、液体民主主義が最初に成功したドイツも連邦制だし、いま海賊党が趨勢を誇るアイスランドも、人口が30万人の小国だ。このように、小さなコミュニティにおいて「参加者の顔が見える状態」で民主主義を実行していくことは液体民主主義成功の重要なファクターになりそうだ。

 さらに斬新なアイデアとしては、政策決定のシステムだけではなく行政システムにもイノベーションが必要である、との意見。自分が共同体の一員だという自覚をもつためには、自分が決定にかかわった政策がちゃんと遂行されたという実感をもつことが重要である。それを現代社会で実現させるために、ビットコインなどでいまつかわれている「スマートコントラクト」(自力執行権のある契約)のテクノロジーが有効だ。これを二つ目の課題とかけ合わせて、民主主義の実験都市のような小さな町をいちからつくり、「契約の自動執行」「法の自動実行」のインフラをオープンソースで導入し、その上で液体民主主義を政策決定につかうことが、次世代の民主主義の形なのではないかーという非常に未来志向の意見もあった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

衆院選、自民単独で300議席超 維新と合わせ3分の

ワールド

選挙終盤に響いたママの一言、「戦争の足音」感じた有

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で

ワールド

イスラエル首相、トランプ氏と11日会談 イラン巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 3
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 6
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 7
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 8
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中