最新記事

スポーツ

Jリーグ、そして東京オリンピックで活躍が期待される「スマートスタジアム」とは

2016年9月25日(日)11時45分
マーティン・オッターソン ReadWrite[日本版]編集部

IoTでスマートスタジアムとなったペトコ・パーク球場 photo:ReadWrite[日本版]編集部

 モンスタートラックラリー(カーレース)とテイラー・スウィフトのコンサートにはどんな違いがあるだろうか?

 たとえば、水。モンスタートラックラリーをおこなうためには数千立方メートルの泥が必要であり、さらにいうとその100~1000倍の水が必要だ。また、異なるジャンルだが、同じように言えばテイラー・スウィフトのヒット曲を盛り上げるために使われる、派手なステージングや照明を支える電力は電気代の異様な高騰を招くこともある。

 イベント運営のために莫大なエネルギーを必要とするスタジアムだが、予測分析とセンサーでコストやエネルギー消費を管理し、訪れるファンたちの体験をも変えることができるような取り組みがある。それが、「スマートスタジアム」事業だ。この事業は、コスト削減や新たな観客の体験創出だけでなく、正確な数字でイベントプロモータに請求書を送るためにも推進されている。

関連記事:北京五輪のシンボル「鳥の巣」に今日も閑古鳥が鳴く

 スタジアムは非常に管理が難しい施設だ。客の入りについても、さっきまで数えるほどの人しかいなかったのに数分で10万人が押し寄せたり、その数時間後にまたガラガラになったりすることはザラだ。しかも彼らは、交通渋滞や周りの住民や観客と衝突することもある。そして、スタジアム自体が街のどの建物よりも電気やガスを多く消費しているのだ。誰もスーパーボールのときに起きた大規模停電を二度と繰り返したくはないだろう。

 しかし、それと同時にスタジアムは市民の「誇り」の象徴でもある。IoTはこういったスタジアムに対する市民からの評価のギャップを埋め、無駄な衝突を減らすことができる。

 たとえば、シアトル・マリナーズはIoTを活用することで、3年間で水の消費を10%節約することに成功した。IoT技術によって、スタジアム内の水漏れをピンポイントで見つけることができたためだ(さらに、屋根の開閉にかかる費用がたったの5ドルだというのもこの試みでわかった)。

 サンディエゴ・パドレスは、電力および水の消費を改善するため、LEDライトやスマートセンサー、データ管理システムをスタジアムに導入した。典型的なスポーツの試合での電力消費は70MWh、ガスの消費は740サーム、水の消費は272万リットルにもなるという。今後、IoTを通じて25%以上のコスト削減が期待されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏独英、中国の台湾周辺軍事演習に懸念表明 一方的な

ワールド

サウジ、イエメン南部の港を空爆 UAE部隊撤収を表

ワールド

ロ、ベラルーシに核搭載可能ミサイル配備 欧州全域へ

ワールド

ウクライナ、米軍駐留の可能性協議 ゼレンスキー氏「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中