最新記事

イギリス

英国・メイ内相、首相就任へ:「もう辞めないで!」

2016年7月12日(火)16時30分
ブレイディみかこ

 どこにでも三輪車で入っていく傍若無人なボリス・ジョンソンや、いつもいじめられている労働党首ジェレミー・コービンなど、それは政治家たちの特徴をデフォルメしたもので、内相のメイも登場した。メイを演じた女児は、移民に見立てたぬいぐるみを椅子に座らせて、一人ずつに質問し、「あなたは看護師? 稼ぎが足りないのよ、出ていきなさーい!」と言って一体ずつ移民人形を教室の外に放り出していた。メイは難民問題が深刻化した時に、まるで極右のようなスピーチを行って中道寄りの保守党員たちをドン引きさせた人でもある。

 メイは多くのシングルマザーを厳しい生活苦に追い込んだ緊縮財政を支持してきた人でもあり、ヤールズ・ウッドの移民拘留センターで蔓延していた女性たちへの虐待を長年隠蔽してきたことでスキャンダルにもなった。フェミニズムの前進は言葉ではなく行為で示されるものだというサフラジェットのポリシーに従えば、彼女はまったくフェミニストではない。

 メイと同じく1997年に女性国会議員になり、女性同士でお互いの影の大臣を務めてきた因縁の仲である労働党のイヴェット・クーパーはこう書いている。


 メイが率いる保守党政権はどうなるでしょう? 「彼女なら安心して任せられる」「国を一つにユナイトできる」などというハイプを信じてはいけません。(中略)
 実際のところ、分裂はさらに大きくなるでしょう。
出典:Guardian:"Theresa May helped to divide Britain. She won't heal it" by Yvette Coopern

 とはいえ、メイもしばらくは「穏健派」イメージで混乱の収集にあたるのだろうが、クーパーはこんな不吉なメイの人物評も書いている。


物事がうまく行かなくなると、彼女はきまって姿を消します。
出典:Guardian:"Theresa May helped to divide Britain. She won't heal it" by Yvette Coopern

 英国に流行語大賞があったら、今年のそれは「もう辞めないでくれ!」になるかもしれない。


[執筆者]
ブレイディみかこ
在英保育士、ライター。1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2016年6月22日『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)発売。ほか、著書に『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、米大統領の空爆停止要請受け入れ 次回3者協

ビジネス

米エクソン、第4四半期利益は予想上回る 生産コスト

ビジネス

シェブロン、第4四半期利益が予想上回る ベネズエラ

ビジネス

スイスフラン操作には一切関与せず、中銀表明 米為替
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 6
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 7
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 8
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 9
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 10
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 8
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 9
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中