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英EU離脱をノルウェーはどう見たか「ノルウェーモデルはイギリスには耐えられない」

2016年7月5日(火)15時10分
鐙麻樹(ノルウェー在住ジャーナリスト&写真家)

「イギリス人には、現状を改善したEEAが適しています。ノルウェーが本来そうあるべきでように、一部のEUの規則を受け入れずに、交渉を進めるべきです。これをきっかけに、ノルウェーでEEAにおける新しい議論が巻き起こるといいのですが」(EU反対代表カトリーネ・クレーヴェランド)

「EU賛成」団体は、ノルウェーがイギリスに便乗することに反対する。「イギリスが本当に離脱すれば、EUはノルウェーにとってさらに重要なパートナーとなります。EUの外で孤立化するイギリスと共に解決策をさぐるよりも、EUとの関係を維持するべき」(ユーロピアン・ムーヴメント代表ヤン・アイリック・グリンドハイム)

単一市場と引き換えに発言権失う

 グリンドハイムは同時に「ノルウェーモデルはイギリスには向かないだろう」と首相と同じ見解を示す。「EEAと75の協定は、ノルウェーをEUメンバーのようにさせながらも、発言権を失います。イギリスには受け入れがたいでしょう」 

 取材を続けて関係資料を読めば読むほど、ノルウェーモデルは「EUという巨大帝国への入場チケットを手にした、発言権のない商人」のように感じてくる。

 EU非加盟国の仲間入りをするイギリス。ノルウェーモデルに注目が集まる中、ノルウェーは火の粉を浴びることを避けるのか、この機会を利用するのか。イギリスは、ノルウェーやカナダ」を参考にしつつ、独自の「イギリスモデル」を模索するのだろうか。Brexitドラマはまだまだ続きそうだ。

Photo&Text: Asaki Abumi


yoroi-profile.jpg[執筆者]
鐙麻樹(あぶみ・あさき)(ノルウェー在住 ジャーナリスト&写真家)
オスロ在住ジャーナリスト、フォトグラファー。上智大学フランス語学科08年卒業。オスロ大学でメディア学学士号、同大学大学院でメディア学修士号修得(副専攻:ジェンダー平等学)。日本のメディア向けに取材、撮影、執筆を行う。ノルウェー政治・選挙、若者の政治参加、観光、文化、暮らしなどの情報を数々の媒体に寄稿。オーストラリア、フランスにも滞在経歴があり、英語、フランス語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語で取材をこなす。海外ニュース翻訳・リサーチ、通訳業務など幅広く活動。『ことりっぷ海外版 北欧』オスロ担当、「地球の歩き方 オスロ特派員ブログ」、「All Aboutノルウェーガイド」でも連載中。記事および写真についてのお問い合わせはこちらへ

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