中国「黒人差別」の背景に約50年間のアフリカ蜜月あり
中国は国家戦略上アフリカ外交を重視し、「非洲(アフリカ)の兄弟」も中国を応援した。孤立状態だった毛沢東政権に71年に国連の中国代表権が承認されたのも、大票田アフリカからの政治的支援が得られたからだ。
差別で嫌中化する留学生
中国は政治的利益から外交を重視するが、相手国の文化や歴史を研究する姿勢に欠ける。半世紀以上アフリカ諸国と交流を重ねても、一般の中国人は常に黒人に差別的な目を向ける。
私が80年代に北京で大学生活を送っていた頃、中国語を学ぶ外国人留学生を受け入れる北京語言学院(現・北京語言大学)の学生はほとんどがアフリカ人留学生だった。「アフリカのために人材を育成する」とのスローガンの下で受け入れた学生に対して、「あいつらは黒鬼(ヘイクイ)だ」と公言してはばからない中国人が多かった。21世紀に入るまでに中国は約1万5000人ものアフリカ人留学生を迎えたが、中国で差別を受けた彼らの大半は嫌中意識を抱いて帰国する。
近年もアフリカ人の中国在住者は増える一方だ。最も多い広東省では30万人以上が暮らす。ナイジェリアやアンゴラなどの人々が独自にコミュニティーを形成してビジネスを展開する。
国際結婚を生活改善と立身出世の手段の1つと考える中国人女性も多いが、今でもアフリカ人と中国人との子供は「二黒鬼」と差別されている。在住者の9割以上を占めるといわれる不法滞在者の増加で治安は悪化し、差別も助長されている。
黒人を洗濯して中国人に改造するという心理も、こうした背景から生まれたのだろう。
[筆者]
楊海英(Yang Haiying)
本誌コラムニスト
静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治区)出身。司馬遼太郎賞を受賞。著書に『日本陸軍とモンゴル』など。
[2016年6月21日号掲載]