最新記事

インタビュー

インダストリー4.0やIoTが生み出す付加価値とは

2016年6月24日(金)16時55分
WORKSIGHT

 また、顧客に寄り添って親身に相手の利益を考えようとする姿勢は日本独特のもので、これも日本の強みではないでしょうか。例えば、インダストリー4.0を介して中国とドイツが接近していると言いましたが、中国のみなさんがドイツ一辺倒というわけではないと個人的に感じています。

 ドイツの方々は思考がロジカルなんですね。理路整然と自分たちの製品の特長を説明するけれども、人によってはそれを高圧的ととらえる向きもあるでしょう。そういうとき、「自分たちのニーズに合わせてきめ細かく対応してもらいたい」「お互いにひざを突き合わせる形で寄り添ってほしい」と不満を抱く企業もあるのではないでしょうか。アジア的な親しみやすさがあって、しかも技術力に長けている国となると、それはやはり日本ということで、日本にもっと頑張ってほしいという声があるとも聞いています。

 現状ではみなさん様子見の状態なのかもしれません。このまま行くとおそらくドイツの工場、すなわちインダストリー4.0で生まれたモノづくりのパッケージを採用せざるを得ないけれども、日本はどう出てくるのかを注視されている。日本としては今こそ打って出るチャンスだと思います。

人工知能やビッグデータの活用で顧客ニーズを深掘り

 ソフトウェアの活用によって産業構造が大きく変わることになっても、顧客志向というモデルは従来と変わりません。むしろ人工知能やビッグデータを取り入れることで、顧客の本当のニーズが深掘りできるようになるので、日本企業にとっては自分たちにフィットしたビジネスがやりやすくなるとも考えられます。

 例えば、技術者が良かれと思って作った製品が消費者に支持されなかったという話はよくあります。技術者はいかに高度な技術を実現できるか、機能やデザインにどれだけこだわれるかというところに価値を置いているので、「いいものができた、みんな喜んで使うに違いない」と思い込む。でも、消費者から見ればオーバースペックで使いにくい製品だったりするわけです。

 ところがインダストリー4.0の実現で製品にセンサーが組み込まれると、ユーザーが製品で何をしているのか、製品に何を求めているのかが分かるようになります。個別に吸い上げたデータをビッグデータとして分析すれば、マーケットの大局的なニーズもつかめるようになるでしょう。突き詰めれば、深掘りすればユーザーが喜ぶポイントが的確につかめるようになるのです。

 日本人はきめ細かさでは世界随一を誇ります。そこを生かしつつソフトウェアを駆使して革新的なスマートプロダクト、スマートサービスを作り上げれば、グローバルにマーケットを席巻することも十分可能だと思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ABCの免許取り消し要求 エプスタイン

ビジネス

9月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比4.

ビジネス

MSとエヌビディア、アンソロピックに最大計150億

ワールド

トランプ政権の移民処遇は「極めて無礼」、ローマ教皇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中