最新記事

ビジネス

アフリカで、アフリカ製造業の活躍が始まった

2016年5月16日(月)16時35分
ジュリアン・ワイス(米大西洋評議会アフリカセンター)、エリナ・イワミ

 地元財界と連携し、現地の人材や資源を事業に活かせることも強みだ。多国籍企業が欧州にある本社で意思決定を行うことが多いのとは対照的だ。人材や資源を現地で調達していれば、たとえ国が外貨不足に陥っても企業経営に大きな影響はない。

地縁を活かす

 上手くいけば、遠い自国のやり方やサービスをそのまま持ち込んでいるだけのグローバル企業よりは、格段に競争力のある価格を提示することができる。そのモデルケースが、ザンビアで急成長を遂げる食品会社ザンビーフ(Zambeef)だ。同社は地元で食品別のサプライチェーンを形成し、農家を支援するとともに、為替変動リスクにも効果を上げた。ザンビーフはすでにガーナとナイジェリアに事業を展開しており、コンゴやジンバブエにも進出する計画だ。

 アフリカ各国の政府も国内の消費市場拡大に注目し始めた。ウガンダ政府は2014年、輸入品よりウガンダで生産された製品の購入を推進する政策を打ち出し、政府調達も20%は国産品にするよう定めた。

 アフリカ企業の成功に乗じようと、外資系企業も動いている。コカ・コーラ社は2016年1月、2.4億ドルでナイジェリア飲料大手CHI社の株式40%を取得した。

 この大陸でのビジネスには多くの困難が待ち受けるのも事実。賄賂や官僚主義が蔓延し、通行料や恣意的な関税、政府規制といった非関税障壁もある。インフラや電力不足は大きな課題だ。

 また、同じアフリカでも国籍が違えば敵味方に分かれることも少なくない。ナイジェリア政府は昨年、南アフリカに拠点を置く携帯通信事業者MTNに法令違反があったとして巨額の罰金支払いを命じられた。その上MTNは、ナイジェリア国内のサービスエリアの10%以上で、通信サービスを中止させられている。

 アフリカに立ちはだかる壁は高い。だが、今後はアフリカ企業が地域の景気を拡大させ、経済の多角化を進め、世界的な景気低迷からアフリカを守るのに重要な役割を果たしていくのは間違いない。

ジュリアン・ワイス(米大西洋協議会アフリカセンターのプログラムアシスタント)、エリナ・イワミ(同アフリカセンターのインターン生)

This article first appeared on the Atlantic Council website.

Julian Wyss is a Program Assistant with the Atlantic Council's Africa Center and Erina Iwami is an Africa Center intern.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中