最新記事

対日観

中国は反日? 台湾は親日? 熊本地震から考える七面倒くさい話

2016年4月26日(火)16時12分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

 一つ一つの事実は正しくとも、それで短絡的に反日、親日と結論を出せるような話ではない。まじめに話をするならば、「こういう社会階層の人にはこういう傾向が強く......」「この話題についてはこういう態度だが、この話題については別の態度......」などなど、長くわかりづらい話を延々としなければならない。

中国人の対日観=「無関心」

 それでも無理やりにわかりやすくまとめるとするならば、中国人全体の対日観は「無関心」というのが正しいところだろう。お隣の国であり、長い交流の歴史も戦争の体験もあるとはいえ、結局は外国。たいして気にならないという人が圧倒的だ。

 こう説明すると、「中国では愛国主義教育が盛んに行われ、テレビでは抗日戦争ドラマばかりが流れているというじゃないですか。それで無関心ということがありますか?」と反論をいただくこともある。しかし考えてみれば、私たち日本人も学校教育でかなり外国について学んでいるが、すっかり忘れてしまったという人が少なくないのではないか。中国とて同じこと。特に愛国主義教育なんて受験とは関係がないだけに、さぼるための絶好の時間となっている。

 靖国問題やら歴史認識問題やらを話させればすらすらと演説できる中国人もいるが、心の底から日本に怒りを覚えているという人はごく少数。話のタネ、"ネタ"ぐらいの扱いでしかない人のほうが多い。たまたま出会った日本人と一生懸命お話ししようという"善意"から、自分の知っている日本ネタを引っ張り出してきたら、南京大虐殺問題しか思いつかなかった......。そういう中国人を何人も見てきている。

中国人が「変わった」理由

 大多数は無関心であったとしても、ネット世論のムードには変化も見られる。SNSの注目コメントランキングやニュースサイトのコメント欄を眺めると、東日本大震災当時と比べて、地震を喜ぶような書き込みよりも、同情の意を示すコメントのほうが多くなったように感じる。その理由はなんだろうか。

「2010年の尖閣諸島抗議デモの記憶も新しく、緊張が続いていた2011年当時と比べて、日中関係は大きく改善しています。また"爆買い"に象徴されるように中国人観光客の日本旅行が急増した影響もあるでしょう。2015年は前年からほぼ倍増となる約500万人が日本を訪問しました。実際に日本を知ることで対日観に変化が生まれているのです。また中国ではくまモンが大人気。熊本に行ったことがなくても、くまモンを通じて熊本を知っている人は多く、多くの関心が寄せられました」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中