燃料電池車はテスラに勝てるか
脚光を浴びる電気自動車に対抗してトヨタやホンダが力を入れる燃料電池車はクルマの未来の新しい主役になれる?
カギは価格 世界初の量産型FCVという触れ込みのトヨタ「MIRAI」(昨年11月、フランクフルト) Kai Pfaffenbach-REUTERS
地球温暖化の一因となっている二酸化炭素(CO2)の排出をゼロに近づけようと思えば、避けて通れないのは、ガソリンなどの化石燃料を使う自動車からの脱却だ。
これまでその転換の主役として脚光を浴びてきたのは、電気自動車(EV)だった。テスラモーターズのモデルS、ゼネラル・モーターズ(GM)のシボレー・ボルト、日産自動車のリーフなどである。
【参考記事】「環境に優しい」はウソ? 中国の電気自動車、発電の元は石炭から
しかし、これとは別の技術に期待を寄せる自動車メーカーも現れている。そのテクノロジーとは、燃料電池車(FCV)。燃料電池で水素と空気中の酸素を化学反応させ、それによってつくり出した電気で走る自動車のことだ。
補給する必要があるのは、水素だけ。ガソリンはまったく使用しない。1度の水素補給で走れる距離は、EVが1度の充電で走れる距離より長い。有害なガスを排出するガソリンエンジン車と異なり、吐き出すのは水蒸気だけだ。
開発競争も熱を帯びている。昨年の東京モーターショーでは、トヨタのレクサスブランドがFCVのコンセプトモデル「LF-FC」を、ドイツのメルセデス・ベンツがコンセプトカー「ビジョン・トウキョウ」(燃料電池と電気の両方で動くミニバン)を出展。ホンダは、新型FCV「クラリティ・フューエル・セル」の市販予定車をお披露目した(3月に日本でリース販売を開始する予定)。
トヨタは既に、14年12月に日本でFCV「MIRAI(ミライ)」を発売し、昨年秋には北米とヨーロッパでも販売を開始している。世界初の大量生産のFCVという触れ込みの車だ。日本での発売開始から1カ月間の受注台数は、国内年間販売計画の400台を大きく上回り、1500台に達した。納車まで2~3年待ちのケースもある。
ただし、FCVが利便性を発揮するためには、水素ステーションがドライバーの身近になくてはならない。現在アメリカ国内にあるステーションは、たった十数カ所。そのほとんどがカリフォルニア州、それもロサンゼルスの周辺に集中している。しかも、一般のドライバーが利用できるのは数カ所だけだ。
日本が普及の先頭を走る
それでも整備は進んでいる。カリフォルニア州エネルギー委員会は莫大な予算を確保して、水素ステーションの建設を推進。委員会が目指す100カ所には遠く及ばないが、今年末までには州内のステーションがおよそ50カ所まで増える見通しだ。コネティカット州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州の知事も、FCVの普及支援を打ち出した。