最新記事

中国

習総書記「核心化」は軍事大改革のため――日本の報道に見るまちがい

2016年2月10日(水)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 そのため「以習近平総書記為核心的(習近平総書記を核心とした)」という枕詞が使われるようになったのである。

【参考記事】「核心」化する習近平

 この言葉を以て、日本のメディアや一部の中国研究者は、「習近平が個人崇拝を煽っている」とか「胡錦濤には"核心"という言葉を付けて称したことがない」とか、はなはだしきに至っては「集団指導体制は胡錦濤のときから始まった」など、もうあまりに現実を無視した分析を拡散させているので、まちがいを指摘し、注意を喚起したい。

「核心」という言葉は胡錦濤総書記(国家主席)に対しても使われていた

 たしかに、毛沢東、鄧小平、江沢民に対してそれぞれ第一世代、第二世代および第三世代指導集団の「核心」と称していた。
これは文革が終わったあとに、国家主席にも中国共産党中央委員会(中共中央)総書記にもなったことがない鄧小平が自分の位置づけに困り、思いついた呼称である。

 毛沢東時代には文化大革命(1966年~76年)があって、その間、毛沢東は「国家主席は必要ない」として国家主席(劉少奇)という職位を空席にしたまま、自分自身が最高指導者として君臨した。毛沢東逝去後も、改革開放が始まるまで臨時的に中共中央主席や国務院総理などを置いたりしたので、毛沢東が生きていた時代と、その後鄧小平が改革開放を進めている時代を区分するために、毛沢東時代を「第一世代指導集団」、鄧小平が君臨していた時代を「第二世代指導集団」と位置付け、その「核心的人物」を、毛沢東および鄧小平としたのである。いや、そうするしかなかったのである。

 それは1989年6月4日に起きた天安門事件で失脚した「胡耀邦や趙紫陽の時代」を明示しないことに役だったし、また文化大革命で獄死させられた「劉少奇・国家主席時代」に触れることを避けるということにも役立った。

 ここで重要なのは、あくまでも「曖昧模糊(あいまいもこ)とさせること」が、「核心」という言葉を思いついた理由であり目的だったということである。

 江沢民が途中から中共中央総書記(1989年)になったり国家主席(1993年)になったりしたのは、これもまた天安門事件のせいだったので、江沢民に関しても「核心」という言葉を使うのは、「天安門事件を明示させないため」だったのだ。

 つまり「核心」という言葉は、中国政府にとって都合の悪い事実を「隠すため」あるいは「ごまかすため」に思いついた言葉なのである。

 しかし、これが慣わしになってしまい、正常化された胡錦濤政権時代になっても、「核心」という言葉を胡錦濤国家主席(中共中央総書記)に対して使っている。

 その証拠というか、例をお示ししよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、自身のSNSに投稿された人種差別

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、リスク資産反発受け 円は衆

ワールド

トランプ氏、インドへの25%追加関税撤廃 ロ産石油

ビジネス

米FRBは年内1─2回の利下げ必要=SF連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 10
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中