最新記事

安保法制

中国は日本の武力的脅威になるのか?――安保法案の観点から

2015年9月17日(木)17時45分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 以来、アメリカはこの姿勢を崩したことがなく、2013年6月における習近平国家主席の訪米の共同記者会見で、オバマ大統領は高らかに「どちらの側にも立たない!」と叫んだ。

 このことは2015年4月29日付けの本コラム「日本が直視したがらない不都合な事実――アメリカは尖閣領有権が日本にあるとは認めない」で詳述した。

 中国はこれがあるからこそ、尖閣諸島に関して強気の態度を取っているのである。

 だから日本が「外交的努力」で説得すべきはアメリカであって、中国ではない。しかし日本には、アメリカを説得する勇気が、今もないのである。

 日本にとって最大の問題は、ここにある。

日本は占領時のアメリカと対等になれていない

 アメリカは日本敗戦に当たり、日本を完全に武装解除し、二度と再び武器を持てないようにした。その精神に基づいて1946年に日本国憲法を制定させておきながら、1950年6月に朝鮮戦争が始まると180度方針を転換して、サンフランシスコ平和条約と同時に日米安保条約を締結させた。こんにちの自衛隊の前身である警察予備隊を設置。日本の武装化に関して、相矛盾する、あいまいな姿勢を見せた。

 このねじれが、今も日本を歪めている。

 今般の安保法案是非の根源も、ここにある。

 日本は米軍基地を受け容れ、アメリカ軍の庇護の下に「戦後平和」を保っている。

 そのアメリカの傘下から逃れたとき、日本の防衛はどうあるべきなのか?

 それとも永久にアメリカの庇護の下に置かれたまま日本という国は生きていくのか?

 それは「日本がアメリカと対等になるのか否か」の選択なので、そのためにはアメリカの占領下で制定された「日本国憲法」のあり方そのものを問うべきであって、ねじれを内包したまま「解釈」のみで憲法をいじろうとするので、論争が起きる。

 憲法と現実の間に乖離があるのはたしかなので、新しい体制に移行するなら、憲法改正を国民に問うべきだろう。

 それが独立した「国家」のあり方ではないのだろうか。

 解釈だけで戦後体制を変えようとするのは、アメリカの占領下からまだ逃れておらず、アメリカと対等にものが言えないことを意味する。

 対等になった上で、強い日米同盟を結ぶことには特段の問題はないだろう。ただ、それまでには長期間にわたる議論と日本国民の覚悟も要求されるのではないだろうか。

[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:「氷雪経済」の成功例追え、中国がサービス投資

ワールド

焦点:米中間選挙へ、民主党がキリスト教保守層にもア

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ワールド

中国、米国産大豆追加購入の可能性低下も 関税違憲判
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 2
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 5
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 10
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中